[声綴り(1) ケレンス&リンローナ]
メラロール市、酒場を出て宿に帰る途中。星月夜。
〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜
「さみーっ!」
「うん。凍えそうだね……」
「……」
「……」
「冬は寒くてヤだぜ。何とかなんねぇのかなぁ」
「うーん」
「例えば、夏の暑い空気を取っといてさ。魔法で」
「魔法で?」
「そう。で、冬に送り込んで流せばいい。夏は逆でさ」
「ふふっ。面白いね」
「だろ? そしたら、いつでも過ごしやすいぜ」
「……でもケレンス、ほんとにそう思うの?」
「だって、そうだろ? 寒いのは勘弁だぜ」
「あたし、冬には冬の良さがあるかな……って思うの」
「冬の良さ?」
「うん。雪とか、氷とか、冷え切った空気とか」
「やっぱ寒いものばっかりだろ」
「うーん。でも、そういうのがないのはちょっと寂しいな」
「そうかぁ?」
「いつでも過ごしやすかったら、メリハリがなくなるよ」
「んー」
「夏も冬も、きっと楽しさを見つけられる気がするんだ」
「……」
「……」
「そうか」
「うん」
「なぁ」
「ん? なあに?」
「リンはすごいよな」
「えっ? 何が?」
「……いや、分かんなきゃ、いい」
「ふーん。変なケレンス……」
「……」
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