幾日も、何かを後悔し続けるかのような秋雨が続いたあと、磨かれた青空はどこまでも青く澄み、光はまぶしく暖かかった。
母と一緒に歩いていた日曜日の買い物帰りの公園で、小学校三年生の麻里(まり)は木々をあおぎ見て、歓声をあげた。
「わあ、かわいい」
早くも季節を先取りして色づき始めた葉の間から、細長くした小さなトマトのような赤い実が、手の指を広げるようにして幾つもなっている。青空の間の朱色は、とても綺麗に映えていた。
「花水木ね」
麻里の後ろに立ち、大きく膨らんだスーパーの袋を丁寧な動作で静かに地面に下ろして、母は樹の名前を教えてくれた。
「かわいいね、あの実、お母さん」
黒い瞳を夢みるように大きく見開き、時々まばたきしながら、小さな麻里は背の高い花水木のたくさんの実を眺めている。
「そうね、鮮やかね。私も好き、花水木」
まぶしそうに空に手をかざし、程良い涼しさと明るさの中で気持ちよさそうに微笑みながら母が応えると、娘は振り向いた。
「うん、私も!」
優雅でまろやかな秋の一日は、緩やかに透き通って――。
生命(いのち)の祭り、豊穣に彩られた実りの時を迎える。
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