2006年 7月

 
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2006年 7月の幻想断片です。

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  7月31日− 


 時が止まっても
 いつか帰って来ればいい

 本当は
 時は動いているから

 全くの続きは
 見られないけれど

 懐かしい場所は
 あの日と似た優しさで

 きっと
 つつみこんでくれるから

 「おかえり、まってたよ」
 って――
 


  7月30日− 


(休載)
 


  7月29日− 


(準備中)
 


  7月28日− 


(休載)
 


  7月27日− 


 車輪をきしませてカーブを曲がり
 いくつもの橋を越えて
 次第に迫る山に向かい
 坂を登ってゆく

 山奥の小駅を目指す
 古い気動車の中では
 ゆっくりと景色が流れて
 人々の会話は弾んだ

 その先へ続くという未練は
 とうの昔に忘れたような
 雄大でも卑屈でもない
 ありのまま、そこに佇む終点は

 昔の時代を遺したまま
 長い静寂につつまれていた
 小鳥たちに混じって
 既にとんぼが飛び交うものの
 そこに待っていたのは
 確かに夏の集落であった

 かつてはどこにでも存在した
 けだるさと不思議な期待につつまれた
 いつまでも続いてゆきそうな
 ある夏の日、そのものが

 誰もいないバスを
 運転手は出発させた
 人々は列車に乗り
 エンジン音が響き始める

 人々は行き交い
 それでも時は動く
 あの列車のように
 進むのがゆっくりなだけ――


2006/07/27
 


  7月26日− 


(準備中)
 


  7月25日− 


(準備中)
 


  7月24日− 


(準備中)
 


  7月23日− 


 時間は同じ速さで流れない

 永遠すら一瞬にして過ぎ去り

 一瞬の中にも永遠のきらめきが宿る
 


  7月22日− 


 つい時よりも急いで
 花の香が
 風の音が
 虹の色が
 遠ざかったならば――

 一呼吸置いて
 空を見上げて
 あの森を思い出してみよう
 


  7月21日× 


(休載)
 


  7月20日△ 


(休載)
 


  7月19日− 


(準備中)
 


  7月18日− 


(準備中)
 


  7月17日− 


 風景の表情が柔らかい
 ここで育った人からは
 きっと詩人も生まれるだろう
 


  7月16日− 


 夜の風は
 闇の触手

 どこへゆくの
 そんなに身軽に

 だけど本当は
 強い意志を持って

 あなたは知ってるの?
 それとも知らないの?

 あなたの進む方角を
 あなたが目指す目的を
 


  7月15日− 


(休載)
 


  7月14日− 


(休載)
 


  7月13日− 


 あのひとひらの白雪は
 どこに行ったのだろう

 ずっと遠くに……

 溶けてしまったその後で
 翼みたいな雪を降らせた

 雀たちは今日もさえずる
 流れゆく時は夏に注いだ

 一日は過ぎる
 過ぎるから愛おしい

 今日を誇りに
 丁寧に階段を積んで

 いつか曇り空の向こうに
 届きますように
 


  7月12日− 


「こっちだ!」
 真っ暗な先を指差して、少年は短く叫んだ。今夜は曇っていて、月も星も輝いていない。夜の草原は、上から下まで闇のカーテンを下ろしたかのようだった。
 が、そのカーテンは、決して重いわけではない。
 何人かの、歩幅の狭い慌ただしい足音が、はたとやんだ。
 少年たちは息をひそめる。抑え切れぬ鼓動が夜空に響き、我慢しても呼吸は烈しい。待つ間は永遠にも感じる。
 だが、意外にもあっさりと〈その時〉は訪れる――。
 草原の蛙が、低く奇妙な声色で鳴いたのだ。
「あっちだ!」
 すぐに誰かの指示が飛び、手探り足探りで駆けゆく足音、草が踏み分けられて揺れ戻る音、夜風のさざめきが入り混じる。
「待てっ!」
 躍動の時間は、再び、唐突に止まる。少年たちはまた熱い息を潜めて、蛙の知らせを待つ。
 どこか遠くのほうで、水のせせらぎの音が聞こえていた。
 夜はまだ長い。
 


  7月11日− 


 雲間から光があふれ
 心惹かれる

 木々の葉をこするうちに
 風は涼やかになる

 夕焼けの向こうに
 明日の空は見えるのかしら
 高い場所で呼び掛けあう鳥たちは
 今のための言葉

 翻って
 私の中では
 かつての思いを
 繰り返し混ぜ合わせている
 ように
 思えるのだけれど――
 


  7月10日− 


(準備中)
 


  7月 9日− 


(休載)
 


  7月 8日− 


(休載)
 


  7月 7日− 


(準備中)
 


  7月 6日− 


 夜の河は注意すべきと、彼は警告を発した。
「何故?」
 私が単刀直入に尋ねると、彼は星空の遥か遠くを見つめた。
「あの河沿いに立ち並ぶ、虹の切れ端のような電灯の列の続きが、どこから空に含まれるのか……」
 そこまで言うと、彼は私のほうを振り向いて、こう言った。
「その境界線は、夜だけが知るからだ」
 


  7月 5日− 


 地上では湖が
 大口を開けて待っている

 強い雨が過ぎても
 まだ曇り空が残っている

 押し流して
 あの雨雲の大陸を

 青空に白い飛行機雲を引くかのように
 灰色の空に青い梯子(はしご)を
 


  7月 4日− 


(休載)
 


  7月 3日− 


 梅雨の合間の夕焼けは、
 いつもに増して、
 美しく心に響きました。
 


  7月 2日− 


(休載)
 


  7月 1日− 


 隧道は霧の吐息を洩らし
 人々は遠い青空を望んだ

 蜘蛛たちは大いに自らの王宮を広げ
 水滴の真珠で飾るのだった


2006/07/01
 




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