2007年 2月

 
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2007年 2月の幻想断片です。

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  2月28日− 


 澄んだ青空は
 思い出に続く窓

 この青空の下で
 かつて行った“あの場所”の
 懐かしい景色は
 どう佇んでいるのだろう――


2007/02/28
 


  2月27日− 


 桜の樹は、今ごろは
 桃色を作っているのかな

 次の季節を待つ青空の下で


2007/02/27
 


  2月26日− 


 夕焼けの名残が
 西の空にかかっていました

 帰り道の空の色もまた
 季節の染め物の色なのでしょう


2007/02/26
 


  2月25日− 


 薄曇りの空の下で
 吹き渡る風は冷たい

 青い空を懐かしんで
 諸々の隔たりを思う

 遠い空の向こうでも
 確実に時は動いている

 また会えるだろうか
 生きてさえいれば、きっと――
 


  2月24日− 


 すごい速さの飛行機雲は
 飛んだ後に道ができる
 すぐに消えてしまうけど

 人の歩く山道は
 切り開くのに時間がかかる
 けれども長く残るのだ
 


  2月23日− 


 一日のうち
 一瞬のひととき
 カーテンの影が壁に映る

 向こうの家の窓に
 夕日が入り込んで
 その光が届けられる

 輝けるときは
 短いけれど
 それはまた、必ずめぐって来る
 


  2月22日− 


 西の月は少しまどろみ
 明るい目を細めていた

 月が一巡りする頃には
 きっと空気もまどろんで

 春の夜の妖しの霧が
 花びらの間を漂うだろう


ゆうべの月(2007/02/21)
 


  2月21日− 


 老木の枝が折れ
 傷口が拡がったとしても

 そこから新しい芽を――
 夢を生むことができる

 太陽と土と水と
 強い気持ちさえあれば


2007/02/21
 


  2月20日− 


2007/02/20
 


  2月19日− 


2007/02/19
 


  2月18日− 


 夕焼け空を前にすると
 何もかもが
 黒いシルエットに変わる

 生き続ける者も
 朽ちてゆく者も


2007/02/18
 


  2月17日− 


 風は駆け抜ける
 山を乗り越えて
 海を飛び越えて

 風は駆け抜ける
 何かを求めているのか
 ただひたすら駆けているのか
 
 それは分からないが
 風は風と手を携え
 妨害を気にする様子もなく

 駆けている
 駆け抜ける
 それだけでいい


2007/02/17
 


  2月16日− 


 春は
 花からやってくる

 あの角の向こうから
 甘い匂いが漂ってくる

 春は
 鼻からやってくる

沈丁花(2007/02/16)
 


  2月15日− 


 蒼い海原と
 青い大空に抱かれて

 足元には
 白い雪の大地

 遥か空には
 白い雲の大地

 視界は無限に拡がり
 境界は曖昧になる


2007/02/15
 


  2月14日− 


 あの花は残っているだろうか
 突風と雨に耐えているだろうか
 あの小さな白い花たちは


2007/02/14
 


  2月13日− 


 雪の服に着替えた
 山裾は拡がる

 雪空は今は遠く
 青い空はどこまでも続く

 凛と張り詰めた空気の中に
 力強い美しさがある


羊蹄山(2007/02/13)
 


  2月12日− 


 白樺の林はなだらかに続き、針葉樹の木々は緑の葉に雪の傘をかぶっている。梢から覗く空は、優しく鮮やかで深く澄んだ青色に輝く。枝先を縫って雪道を照らす光は、強く明るかった。
 両足のかんじきを操り、馴れた様子で深い雪を踏みしめて歩いていた妹のシルキアが、ふと足を止めた。やや元気のない樹の幹に近づき、顔を寄せる。そして振り返り、姉に呼びかけた。
「お姉ちゃーん、ここにも空いてるよー」
 くまげらの空けたきれいな四角の穴を指さして、シルキアは言った。厚手の上着と手袋、頭には帽子をかぶって家を出たが、いつしか身体は火照り、汗をかくほどだった。サミス村を後にして山の方に進み、森に入り、雪道を上り下りしていたからだ。
 やや遅れていた姉のファルナが、追いついてきて答える。
「いま、行きますよんっ」
 雪道にはたくさんの小さな足跡が残っている。人が通れないようなところにも足跡は続いていたが、ファルナは人が歩ける道を慎重に選びながら進んでいく。かんじきを上げるたびに、ゆうべ降った新雪の粉がふわりと舞った。雲の群れが中央山脈にぶつかり、中腹にあるサミス村の一帯には良質の雪が降る。
 やがて姉は追いつき、妹と一緒にくまげらの巣を眺めた。雪の積もる白樺の林は、光と影がきらきらと交錯する。熊が冬眠している銀世界は、青空のもと、どこまでも続く遊び場だった。


白樺と青空(2007/02/12)
 


  2月11日− 


 白樺の林の
 周りよりも低いところが
 昔日の栄光を遺すのみ

 人に忘れられた、その地にも
 雪は降り、花が咲き
 分け隔てなく四季はめぐる


電力所前(2007/02/11)
 


  2月10日− 


能取岬(2007/02/10)
 


  2月 9日− 


 メラロール王国の南西部は例年に増して暖かかった。

「灰色の雲に実がなって、
 真っ白い雪を降らせ、
 町を塗り替えてゆく――」

 そこに住む若者が言う。

「どうやら、そうなるよりも先に、
 今年は新しい花が咲いて、
 花びらの雪が降り積もるらしいよ」


2007/02/09
 


  2月 8日− 


 月を知るには、何の花が咲いてるか。
 日を知るならば、どの樹に咲くか。
 それが季節のカレンダーです。


2007/02/08
 


  2月 7日− 


 ほらね、とっても固いつぼみで
 柔らかな花を守ってる


つぼみ(2007/02/07)
 


  2月 6日− 


 真冬に咲く梅の花には
 ほら
 次の季節の色が見えるよ


梅の花(2007/02/06)
 


  2月 5日− 


 世界は
 色々な目を持っている

 空を翔ける鳥
 川面をゆく魚

 花や樹や
 光や風すらも

 時の流れとともに
 優しく見ていてくれる


枝の上の鳥(2007/02/05)
 


  2月 4日△ 


 カーテンの隙間から
 朝の光が手を伸ばす

 冬場は光も凍えてて
 家の中が恋しいのかな


朝の光(2007/02/04)
 


  2月 3日− 


 あんな冷たい風なのに、
 洗濯鋏は楽しそう。
 カタカタおしゃべりしていたよ。


北風に揺れる洗濯鋏(2007/02/03)
 


  2月 2日− 


 色んな方に光を目指し、
 複雑に枝を伸ばしても、
 しっかり立ってる樹の不思議。


朝の光の中で(2007/02/02)
 


  2月 1日− 


 枯れ葉の海に
 栗の子、ぷかぷか浮かんでる。


栗の実(2007/02/01)
 




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