[光の妖精]
「あちこちに、光の妖精さんがいるみたい……」
リンローナが言った。森の中は涼しく、鳥たちの歌は爽やかに高らかに重なって響いていたが、全般的にはごく静かだった。
「あっちにも……ほら、こっちにも」
木々の葉が風に揺れて、輝きがちらちらと踊っている。それらを指さして、十五歳の少女は〈光の妖精〉であると説明した。
「幻よぉ」
姉のシェリアが言う。ちょうど太陽が雲に隠れたようで、木漏れ日の宝石たちは一斉に薄くなり、魔法のように姿を消した。
「また出てくるよ、きっと!」
リンローナが腕を掲げると、まるでそれを合図としたかのように今度は太陽が顔を出し、森の地面や草にきらびやかな輝きが振り撒かれた。太陽の僅かな光量や角度の変化が、草木の枝が複雑に伸びるこの場所では、大きな変化をもたらすのだ。
「ん?」
シェリアは目をしばたたき、細めた。
意外な〈何か〉を垣間見たかのように。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
リンローナが訊ねると、姉は我に返り、首を少しかしげる。
「ん? 何でもないわよ」
その時、彼女は斜め後ろをちらりと見て、こうつぶやいた。
(あれが光の妖精……ほんとにいたのかしら)
「気持ちのいい森だね」
リンローナが笑う。シェリアも自然と口元を緩めた。
「そうね、それには同意するわ」
そこの木陰で、草の影で、光の妖精たちも笑っていた。
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