2007年 7月の幻想断片です。
曜日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
天 |
土 |
夢 |
気分 |
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× |
△ |
− |
○ |
◎ |
☆ |
7月31日− |
夜の安らぎ色を溶かしたら
夏の昼間の強い日差しが
淡く優しい黄昏になる
明るさと熱狂の残る
闇の宴がはじまる
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7月25日− |
まばゆく長い光の腕は
きっと奥まで届くんだ
時がめぐりさえすれば
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7月22日− |
けさ、霧は出ていない。
風の水は透き通り、水底の大地がよく見えた。
「見っけ!」
「おっ、いいじゃん」
私たちは空の砂浜で、雲の貝殻を拾っていた――。
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7月21日− |
「落ち着いて……」
木の葉が言う。木の葉は乱れ吹く風に飛ばされ、彼らの思うがままに翻弄されていた。
それでも木の葉は説得を続け、諦めなかった。
「お願い、お願い……」
やがて――。
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7月20日− |
「それは、互いにだよ」
男は言った。
「これを見るんだ」
すると地面が急に消えた。本当に消えたわけじゃなく、単に見えなくなっただけのようだ。足は大地を踏み締めているのだから。
地面の中を、木の根は複雑怪奇に延びていた。
「木々は大地に根を伸ばして、下から地面を支えている。あいつらがいなきゃ、土は雨をもろに受け、流れていっちまう。そのかわり、私らは木々を支えている」
土の精霊の言い分を聞いてから、彼女は感銘深そうにうなずいた。
「そうか……地面が木々を一方的に支えているように思っていたけど、持ちつ持たれつなんですね」
「そういうこった」
土の精霊は鼻の頭をかき、はにかんだ微笑みを浮かべた。
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7月18日− |
「海は、隔ててるんじゃないと思う」
目を細め、どこまでも続く遠浅の碧の海を見つめ、レフキルは言った。妖精族の血を引く緑みを帯びた髪が潮風に揺れている。南国の陽射しは強かった。
「他の国、どこかの町……どこにでも繋がってる」
穏やかな波の遠くを、小さな帆船が渡っている。弧状列島などの小さな島々に向かう舟だろう。
その言葉を噛みしめるように、サンゴーンはゆっくりとうなずいた。
「ハイですの」
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7月15日− |
「朝になると、お星様はどこに行くの?」
「そうねぇ……野原を見てごらん」
草が光を浴びて、きらめいている。
碧のしずくや、蒼いしずく。
赤や白の花を映しているものもある。
それは、まさに星のようだった。
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7月14日− |
[流星奇譚]
夜の砂浜に寝そべって、星たちを見上げていた。昼間の暑さと喧噪は過去のものとなり、涼しさと静けさとが。不思議にゆらぐ波の唄は、心臓の鼓動のように優しく懐かしく響いている。
あ、流れ星――。
銀の一筋が、夜空に淡く儚く美しい線を引いていった。
瞬く星を見上げているうちに、ひょんなことを思いついた。
重力を感じながら、ゆっくりと上半身を起こしてゆく。
手を伸ばし、座ったまま身体を動かして、近くにあった小石を拾い上げた。それを波音の響く暗い海の方に軽く投げた。
この砂浜が、もしも一つの宇宙だったら。
下から見ると、砂浜の砂の一粒一粒が惑星だったら。
たまに転がっている小石が恒星だったら。
そして別の次元の別の場所で、誰かがここを見ていれば。
私の投げた小石を見て、きっとこう言うだろうな。
「あ、流れ星!」
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7月11日− |
「灰色の石の壁で出来た倉庫があって、その隙間から黄金が見えたのよ。扉が私のために少しずつ開いていって、そこらじゅうを金色に塗りかえてしまうくらいの光が洩れ出してて……」
シェリアは一気に喋ると、軽く息を吸って吐いた。
「……それは、夢のなかで?」
妹のリンローナが少し首をかしげて問うた。
すると姉のシェリアは、がっかりした様子でうなずいた。
「そう、ゆうべの夢。もしかしたら予知夢かも知れないと思って、誰にも言わずにいたけど。まぁ、ある意味では、予知夢だわ」
灰色の合間から、まばゆい黄金の光が溢れ出している。雨上がりの夕焼け空を指さして、シェリアは悔しそうにつぶやいた。
「まさに、これよ」
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7月 8日− |
伸びゆく草木は
大地が両手を挙げてるみたい
咲き誇る花たちは
大地が笑っているみたい
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7月 5日− |
星のかけらを集めたら
ひとつ残らず集めたら
暗い夜空を明るく照らす
大きなお日様、できるのかなあ
「それなら今のほうがいいや……」
安らぎの夜の舞台で
ちらちら永久に瞬いている
あの銀の星たちの方が
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