2007年 8月

 
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2007年 8月の幻想断片です。

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  8月31日− 


 国道も高速道路も鉄道も、みな寄り添ってくるのです。
 左右から山並みが迫り、小さな峠を越える時には。
 もっと険しい峠ですとトンネルに入ってしまいますがね。

 季節も、そんな小さな峠越えに入ったようですよ。
 ほら、天気の変化が激しくなってきたでしょう。
 晴れから雨へと、山の天気は変わりやすいのです。

 この隘路を越えてしまえば、再び視界が開けてきます。
 どこか今までと似ているけれど、どこか違った景色。
 次の町は、新しい季節に他ならないのであります。
 


  8月30日− 


「でも、あんな所までどうやって……」
 僕は茫然と立ち尽くした。目的の川は遥か下に見える。
 緑の森はその川の左右に、幅広く広がっていた。太陽は川面を強く照らし、きらきらと光る。空は明るく青かった。
「今からじゃ、夕方にはとても間に合わないわね」
 落ち着いた口調で姉さんが呟いた。諦めたくはないが、どうしようもない。道を間違えたのがいけなかったんだ。
「いや、だから大丈夫だって!」
 変わった形の帽子をかぶった――というよりも、布を帽子代わりに頭へぐるぐる巻き付けた少年が目を輝かせた。
 その態度に、こっちの方はあきれちゃう。
「だって、フオンデル(飛翔魔法)でも使うか、例えば鳥の魔物でも月光術で召喚しないと無理でしょ。この高さを降りるには」
 目の前は崖だ。強い風が背中を押して、何歩か進めば、あっけなく冥界の底まで真っ逆さまだ。
「それとも風に乗るか、風になるか」
 姉さんが遠い目をして静かに語ると、少年は笑った。
「はははっ。風が好きみたいだけど、あいにく、そのどれでもないよ。僕が使う方法ってのは」
「じゃあ何なんだよ」
 僕はいらついて訊ねた。
「あんたら、ここに来たのは逆に運がいい。特別に船を出してやるから。さあ、行くよ! ついてきな」
 少年が胸を張った。僕は姉さんと顔を見合わせた。

(続く?)
 


  8月29日− 


[透き通ったメッセージ(1)]

 朝早く目が覚めたので、私は窓辺の椅子に腰掛けてコップを傾け、冷たいミルクを飲んでいた。
 もう日が昇ってもおかしくない時間だが、空全体に重い雲が立ち込めていて、部屋の中はかなり暗かった。家の空気は、窓も戸も閉まっているので澱んでいるが、どこか肌寒い。
 ぼおっと窓を見ていると、突然、目の前に斜めの線が走った。誰かがそっと、筆を走らせたのだ。
 次に別の方から、今度は短い線が走り、間髪入れずに三本目が記される。文字ができ、単語ができ、やがて複雑な文章へと発展してゆく。
 それを書いていたのは雨だった。透き通った水の絵筆が、透明な窓ガラスに、軽い音を響かせながらメッセージを綴ってゆくのだった。

(続く?)
 


  8月28日− 


「おはよ〜」
 ドアを開けて、清々しい朝の光とひんやりした空気とともに少女が入って来た。軽い身のこなしで歩いてくれば、肩にかかるくらいの茶色の髪と、民俗的な刺繍の入った長いスカートの裾が揺れ動くのだった。
「おはよう、シルキア」
 テーブルの上に、薄茶色と黄土色の混じったような大麦のパンの皿を並べていた母が、顔をあげて挨拶を返した。
 少し開いた窓からは、時折迷い込む朝の風とともに、小鳥たちの唄が聞こえる。
「何、手伝う?」
 シルキアが訊ねた。

(続く?)
 


  8月27日− 


 くすんだ黄金(きん)の月明かりが
 さらりさらりと流れ落ちて
 床の間の銀杯を満たしていた

 涼やかなる風は
 虫たちの楽の調べを乗せて
 微かに密かに流れていった

 次なる季節は
 既に少しずつ運ばれているのだ
 


  8月26日− 


(作成中)
 


  8月25日− 


(作成中)
 


  8月24日− 


(作成中)
 


  8月23日− 


[波乗りの緑(1)]

 汐の香りが鼻をつく。広々とした遠浅の海は鏡のように透き通り、夏の終わりの太陽を浴びて明るい蒼と碧に輝いている。穏やかに寄せては返す波は清々しく白い海の前歯のようだ。
「さあ、行け〜っ!」
 白い袖無しシャツに、膝下までの青いズボンをはいたレフキルは、熱した白砂の波打ち際で掌を広げた。濃い緑色の大きな艶やかな葉が数枚、潮風に煽られて軽く跳んだあと、爽やかに緩やかに揺れながら波の間へとそれぞれ吸い込まれてゆく。
「どうなるんですの?」
 青と紫の格子縞のある薄手の長袖ブラウスを着て少し腕まくりをし、刺繍入りのベージュのスカートをはいたサンゴーンが、片方の手で麦藁帽子を抑えながら興味深そうに眺めている。

(続く?)
 


  8月22日− 


 刃物のように尖った風たちは、他の風と押し合い、荒れ狂っていた。その合間に大きな雨粒が叩きつけるように降って来る。
「今なら、まだ間に合う!」
「だってもう、風でも間に合わないんでしょう……」
 空が猛烈に白く光り、一瞬、すべてが照らし出された。
 本能的な恐怖で身を縮める。
 それから僅かの間ののちに、地響きのような太く強烈な音が響き渡った。それは全ての物音を圧倒し、一瞬で黙らせた。
 その音が収束してゆくと、再び風と雨の呻き声が高まった。

「あれに乗っけるんだよ、あの稲光に」
「乗っけるって言ったって……」
「他に間に合う方法はない。やるしかないんだよ!」
「チャンスは一瞬だぜ?」

 次の刹那――。
 また空は燃え、雷が炸裂し、巨大な音が叩きつけられた。

「そうだ、あの一瞬を狙うしかない」
「……分かった。それしかないのは分かった。やむを得ない」
「まずは練習をしてから、正式な言葉を乗せよう」
 二人は準備を始め、次の稲光を待つ――空の彼方で。
 


  8月21日− 


[太陽の器]

 薄暗い骨董店の倉庫が、にわかに明るくなった。
「まぶしい……」
 リュナンは思わず手で目を抑えた。壷の蓋を抜くと、まばゆい光があふれてきた。まるで壷の底に太陽がいるかのようだ。
「これ〈太陽の器〉よ」
 サホが説明する。
「これを晴れた夏の日に外に置いとくと、光る水が溜まる。それは太陽の光の蒸溜水なんさぁ」
「お日様の光の、蒸留水」
 リュナンは顔をあげて、壷から神々しくあふれる光を改めて見つめた。
 やがてサホが毅然とした口調で言う。
「冬の、一番寒くて曇った暗い日に開ければ、きっと元気が出るよ。そのための光の貯金をしとこう」
「うん。ありがとう」
 壷にふたをして、リュナンは優しく、どこかはかなげな微笑みを浮かべる。
「夏が終わり、秋が過ぎて冬が来ても、夏は幻じゃなかったって分かるね」
「そうだよ」
 サホは相槌を打ちながら、リュナンの中ではこの夏の暑さもどこか幻に感じているのかなと、ふっと心が苦しく重くなるのを感じていた。
 風は凪ぎ、空気はからっとして暑かった。
 ズィートオーブ市の旧市街、オッグレイム骨董店には、夏の終わりの朱く澄んだ夕暮れの光が斜めに深く差し込んでいた。
 


  8月20日− 


 森の道から見下ろす、少し低いところに、幾つもの小さな池が連なっている。
 休みなく降り注ぐ太陽の光が池を照らすと、そのきらびやかな反射が、森を足元から明るくしている。
 楕円や、つぶれたような丸い池たちは、海に浮かぶ島々のようだった。
 そして目の前に続いてゆく森の小道は、緩やかな傾斜と曲線を描き、池の反射を受けてぼんやりと明るい。
「これが、輝きの道……」
 そう呟いて、感嘆の溜め息を洩らした。
 


  8月19日− 


 星の瞬きが
 そのまま歌になったかのような
 秋の虫の声なのです
 


  8月18日− 


(休載)
 


  8月17日− 


(休載)
 


  8月16日− 


(作成中)
 


  8月15日− 


「ようやく、暮れてきましたね」
 そっと呟いたのは、若き〈月光の神者〉ムーナメイズである。
 メラロール市よりもだいぶ北に位置するノーザリアン公国の黄昏は、夏になるとかなり遅い時間にやってくる。
 既に日は沈み、公都ヘンノオ町の夕暮れは急激に進行し、深化する。空はかなりの速さで光を失い、灰色へと変じて、見晴るかす郊外の原野の見える範囲が狭まってくる。
 盛夏とはいえ、この北国の宵の口には爽やかな渇いた風が吹いている。町の家々には温かな色合いの明かりが燈っていて、ちらちらと燃えている。
「どこから来て、どこへ行くのだろう」
 彼は静かに問うた。風に、星に、あるいは自分自身に――。

 東の山の彼方から、右側の欠けた月が現れる頃には、空はすっかり暮れて、頭上には満天の星空が広がっている。
 町の明かりのほとんど見えない夜更けである。
 若き〈月光の神者〉ムーナメイズは月明かりを目に焼き付けると、ほとんど音を立てずに歩き出し、その場をあとにした。
 淡い月の光とかすかな夜霧が町に染み込んでいった。
 


  8月14日− 


 予定が変わり、冒険者たちは商人たちの護衛を引き受け、別の町へ移動することになった。
「ラブール町には行けないね……」
 リンローナは〈残念〉という単語こそ使わず、軽く呟いたが、その本心は仲間に伝わってしまった。
 ケレンスはすぐ、はっきりと言い放つ。
「また来りゃいいじゃん!」
 リンローナははっとして顔をあげた。それから相槌を打つ。
「そうだね」
「ああ。元気なら、きっとまた来れるさ」
 ルーグが太鼓判を押した。
 するとリンローナは瞳をきらめかせ、深くうなずくのだった。
「うんっ!」
 少女は次の機会を待ち焦がれるかのように、遠い目で未来を見つめるのだった。
(今回は、ここまで。また今度、来るね!)


2007/08/14 朝
 


  8月13日− 


(休載)

2007/08/13 琵琶湖
 


  8月12日− 


 かの地は
 緑深き山にあり
 恵み多き川があり

 人々は
 遠い過去から幾世代も
 気高さを今に伝えている

 出会いは偶然か必然か
 今はただ誇りに思う
 かの地に縁(えにし)あることを

 林に差し込む光の筋を
 涼やかなるせせらぎを
 記憶の筆で刻み込む


2007/08/12 筑前「秋月」
 


  8月11日− 


 忘れちゃいけないことがある――。

 いつか私が
 この劇の主役を降りる日が来ることを


2007/08/11 雲仙普賢岳と平成新山
 


  8月10日− 


(休載)

2007/08/10 安芸の宮島
 


  8月 9日− 


 暑い光がミザリア市に降り注いでいる。これだけ暑ければ、夕方にスコールが降り注ぐかもしれないな。
 今日はお休み。硬い草で編んだ床の窓際に寝転がって、うつらうつらしていた。眠りと目覚めの波間を漂う、幸せな時間。

 と、その時――。
「ウピ〜っ!」
 突如、誰かの絶叫が聞こえた、ような気がしたんだ。

「ん……」
 あたしは寝返りを打った。結構、汗をかいてる。
「ウピ!」
 二回目だ。あたしは、今度は兎みたいに跳び起きた。
「な、何事ぉ?」
 夢じゃなかったんだ――と思ったのも束の間。
「ウピ〜っ! 出てきてぇ!」
 三回目。どうもあの高い声、耳に覚えがある。
 もしかしたら、ルヴィルかな?

「ウピ」
 少し離れた所から、母が不安げにあたしを見下ろした。
 あたしは立ち上がる。
「大丈夫、友達かもしれない。ちょっと見てみるよ」
 身を低くして窓の横に寄り、少しずつ顔を上げてゆく。
 そして〈それ〉を見つけ、焦点が合ってゆくんだけど――。
「な……何これ?」
 まさか、これって夢の続き?
 もしかして、まだ夢の中?
 いま現実に見えるものが信じられなくて、あたしは目を白黒させたのだった。

 呆然と立ち尽くしていると、気付いたルヴィルが手を振った。友達は水着姿だった。
「あっ、よかった、ウピ! あたいよ!」
 水着姿のルヴィルが、水の中にぷかぷか浮かんでいた。
 海から切り取ったような、ゆらゆらした楕円みたいな、大きな水の固まりの中に。

(続く?)
 


  8月 7日− 


[風の翼(1)]

 時折、勢い良く潮風が吹き抜けた、からっと暑い夏の一日だった。窓から差し込む南国の光は強く、濃い影を描いた。
 時間が経つのは早くて、今日はもう終わろうとしている。
 サンゴーンの家の玄関を出ると、あたしたちはどちらからということもなく、自然と立ち止まった。
「今日、変な雲が多いね〜」
 あたしは空の高みを指差して言った。南国の赤い花を彩る綿のように柔らかそうな雲、波のように横へ長く続く雲。
 伝説の龍を思わせる雲には畏れと敬意を感じる。鳥みたいに自由な雲もある。
「秋みたいに青い空ですわ」
 サンゴーンが穏やかに目を細めた。その親友の銀の色をした前髪が、また急に吹いた夕風に煽られて動いた。
「もうすぐ一番星が見えそう……」
 あたしが呟いた。
「ですわ〜」
 独特ののんびりした口調で、友達が相槌を打った。

  8月 8日− 


[風の翼(2)]

(前回)

 やがてサンゴーンは一歩、二歩と歩き出して、ぽつりと言った。
「今日は風さんがよく見えますわ」
 風さんが――よく見える?
 サンゴーンは確かにそう言ったみたい。
「えっ?」
 親友の華奢な背中に、あたしは疑問をぶつける。
 再び強い風が流れ、サンゴーンの長いスカートの裾を揺らした。
「レフキル、あれですの」
 夕焼け空を背景にしてサンゴーンは立ち止まり、あたしの方を振り向いた。赤い夕日を受けて、胸元の〈草木の神者〉の印がきらりと光る。
 それから優しく穏やかな微笑みを浮かべた。
「きっとあれが、強い風さんの正体ですわ」
 サンゴーンは天の高みを指し示した。

 あたしはすぐに気付いて、澄み切った気持ちで、それを眺めていた。
 そこに浮かんでいたのは一対の白い翼だった。うっすらとした雲が、羽ばたく鳥のような姿をしていたのだ。
 強い風と白い雲が作り上げた芸術作品だった。
「風さんだって、鳥さんのように、きっと翼があるはずですわ」
 あたしのすぐ横で、サンゴーンが静かな感動を込めた声で語った。
「そうだね……きっと」
 あたしたちはしばらく立ち止まったまま、流れてゆく風の翼を見つめていた。
 静かで平穏な夕暮れだった。まもなく日が沈むんだろうな。
「あ、一番星ですわ!」
 サンゴーンが、夜の染み込んでくる東の空のかなたを指差した。

(了)
 


  8月 6日− 


 今日の太陽は沈んだ。夕焼けは最高潮の盛である紅と橙を過ぎて、静かに溶けてゆく。
 やや埃っぽく、古い匂いのする書斎で、私は机に向かって本を読んでいた。ずいぶん前に死んだ作者の本だ。

 ふと、私は顔を上げた。
「ん?」
 その瞬間、何かがひどく奇妙なことを感じ取り、私は部屋を見回した。
 薄暗くなってゆく部屋の片隅に、目を射るような強い光が残っている。
「何だ、あれ」
 私はつぶやき、立ち上がると、ゆっくり歩き出した。

 床に残されたまばゆい光は、周りが暗くなる中で、いよいよ目立っている。
 光の前に立って、しげしげと見下ろす。何やら、相手は息をひそめているように感じられた。
「よっ……」
 気をつけながら、光の中に足を下ろしてゆく。
 そうして、もう少しで触れそうになった瞬間――。
「おっ!」
 強い光は一斉に引っ込んだのだった。
 私は驚いて目を見張った。そろりと足を下ろせば、そこはもう、何の変哲もない部屋の絨毯だった。
「猫の尻尾みてぇだな」
 私はひとりごちて、それから短くなった光を眺めた。

 その時だ――私はさらに気付いた。
「あれは何だ?」
 強い光の源をたどると、見覚えのない、古びた小さな坪に行き着いた。
 関心は自然とそちらに向かってゆく。私は再び歩き出した。
 恐る恐る、片目をつぶって上から覗いてみると、底が渋い黄緑色に輝いている。かなり強い光を発しているので、目が疲れてくるほどだ。

 私は顔を上げた。
 そこはもう、私の家の書斎などではなかった――。

(続く?)
 


  8月 5日− 


 今を知らせるのは
 時計の針

 過ぎた時を計るのは
 思い出の大きさ

 絶望と希望の種が
 見えない未来を創る
 


  8月 4日− 


「お姉ちゃんと、お母さんの話をしてると……お母さん、幻じゃなかったって思えるんだ」
 リンローナはそう言うと、ゆっくり息を吐いていった。肩の力が抜けてゆく。
「幻なんかじゃないわよ」
 姉のシェリアは小さく答えた。そっぽを向いているので、表情は読み取れない。
「私たちが思い出して、話題にしている間は、母さん、幻なんかにはならないわ。決して」
 シェリアは、今度は顔を上げてはっきりと言った。
(私たちが話題にしている間は――決して)
 その言葉をよく噛み締めてから、リンローナは頷くのだった。
「……うん」
 


  8月 3日− 


 あの日の夕日は
 もう遠くなったけれど

 今日の夕日があり
 明日の夕日がある

 大事さに上下はない
 どれも大事な夕日

 雲の切れ間から
 オレンジの梯子が降りてきたよ

 


  8月 2日− 


 青い世界で、白い波が風に吹かれて、ゆっくり打ち寄せる。
 切り立った灰色の岩山が、少しずつ隆起してゆく。
 そして大粒の雨が……。

 雲の白波、波がしら
 積乱雲の雲が峰――
 ここは遥かな空の世界

 


  8月 1日− 


「海流船?」
 私が尋ねると、はるばるミザリア国からやってきた歴戦の船乗りは、日焼けした精悍な顔をほころばせて、こう言った。
「おうよ。海流船さ」
 弧状列島の遠浅の青緑の海、椰子の樹、青空と白い雲、波間に踊る光と陰、潮の味、真っ赤な大輪の花、珊瑚礁について軽く語ってから、いよいよ彼は海流船について説明を始めた。
「弧状列島では汐の流れが複雑だ。特に干潮、満潮のときは予想以上に速さの増すところがある。海流船はそれを利用して、考えられないくらいのスピードで海を駆け回るのさ」
 海流を知る者が弧状列島の勝者だと、彼は言った。
 




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