2008年12月

 
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2008年12月の幻想断片です。

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 12月31日○ 


[凍てつく晩に]

「静かだね、おかあさん」
 リンローナがつぶやいた。その呼吸が、鼓動までが聞こえてきそうなくらい、音の喪われた晩だった。ランプの光が形作る黄金の世界の中に、温かな白い吐息が浮かび上がる。
「ええ」
 そう呟いて毛布を一枚重ねてくれた母の腕は細かったが、ふと頬に触れた時、とても温かで優しかった。
「おかあ……さん」
 二度目のリンローナの呟きは、より安らかで、より満ち足りた響きを帯びていた。
 夢のはじまりに、港から新年を告げる汽笛が混ざりだした。

 それすらもまた夢の一つなのか――。
 もうすぐ十六歳になるリンローナは、遙か昔のことを夢の夢に描いて、静かに安らかな眠りへ落ちてゆくの だった。
 




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