[聖なる森の朝]
鳥たちの囁きや挨拶、唄が続いている。
速やかに森の木々を縫って、青緑の泉に朝の最初の光が差し込んだ。
その泉のほとりに若い女性が立ち、目を閉じて祈りを捧げていた。金色の長い後ろ髪が澄んだ涼しい風に揺れる。
祈りを終えたサミス村の賢者オーヴェルはその場にしゃがみ、足元に置いた細長い瓶を手に取った。
それを横に倒し、ゆっくりと泉に浸してゆく。風のように透き通った水が、白い陶器の瓶に満たされていった。
いくつかの滴が撥ねて、オーヴェルの長い指をささやかに冷たく濡らした。それは草におりた朝露のようだった。
瓶を立てて、蓋を閉じる。後ろ髪が光を受けてきらめいた。
そして彼女は立ち上がり、優しく目を細めて泉を見つめたあと、梢に見え隠れする青空を仰いだ。
どこかの枝から現れた濃い緑の鳥が短く鳴いて、彼女の目の前を横切ってゆく。時の流れが強く、森の鼓動が大きくなる。
朝が、目覚めた――。
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