2010年 6月

 
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2010年 6月の幻想断片です。

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  6月28日− 


 遠く山と川を越えて
 やってきた場所に待つのは
 疲れの底の安らぎ
 


  6月15日− 


 夜に強い雨の降った翌朝
 洗われたあの道が、新鮮に見える――
 


  6月12日− 


 山が霞み、河が流れ、稲の農地が続いている。
 ラット連合国の南カイソル州は湿度の高い気候で、古くから水に恵まれる。ぼんやりと広がっている平原は、悠久の時間と雄大な空間を奏でている。ずっと遠くから、もっと遠くまで――。
 


  6月10日− 


[旅の終わりと旅の始まり]

 出発の朝が来た。タックが宿の支払いをしている間、俺とリンは表に出て、何となく後ろ髪を引かれて落ち着かないような、それでいて大地に根を生やして落ち着いているような、複雑な時をすごしていた。
 僅かな間、世話になった人たちの顔と、これから向かう空の青さが交錯する。
 
 この町にも別れを告げて、どのくらい遠く歩いてゆくのだろう。
 二度とは訪れないかも知れない、不思議と懐かしい町並みを見上げて――。

「タック来たよ」
 リンの言葉でふと我に返る。タックの後ろから、宿のおかみさんがついてくる。
 時が一瞬留まり、俺たちは顔を見合わせて確かめる。準備が整ったこと、ここにいたこと、ここにいること。
「行ってらっしゃい」
 おかみさんの声を背中に受けて、俺たちはしっかりと歩き始めた。

ケレンス リンローナ タック
 


  6月 8日− 


 遠い空高く
 道は鬱蒼とした森から離れて
 平原を進んでゆく

 遠い山並みの向こうにも
 もう春の風は届いただろうか
 


  6月 2日− 


 その森の奥深くにある泉は、
  日の光を映して
   濃い緑に秘められた輝きを保っていた――

光の泉(2010/06/02)
 


  6月 1日− 


 前の月に別れを告げて
 新しい季節に踏み入れる
 馴れない数字に戸惑いながら
 新たな時を紡いでゆく

 やがて夜の帳が下りて
 新月の闇の下で
 微かに息づく夏の少年
 




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