「ほらっ、赤い実!」
モニモニ町の学院の帰り道、ナミリアが指さした。その向こうに広がっている空は夏に比べると高く遠ざかり、深く蒼かった。
「ネルミアの実だね」
街路樹の下で立ち止まり、小柄なリンローナは背伸びした。
その時、麗しき風が流れ、二人の少女の髪を揺らした――。
海を渡ってくる西風は、あの青空のように涼やかで透き通っている。リンローナは草色の瞳を閉じ、気持ちよさそうに言った。
「あの波に住んでる、お魚さんが見えそうな風だなぁ……」
「風の中に魚が住んでるなんて、リンらしいよね〜」
ナミリアが感心した様子でうなずくと、リンローナは照れくさそうに笑った。十三歳の少女たちが感じた秋は、寂しさよりも豊かさや優雅さにあふれ、明るく優しく、和やかにきらめいていた。
二年前の、南ルデリア共和国・モニモニ町での出来事だ。
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