[木の葉のパレット]
「どれにしようか〜」
落ち葉を入れた篭を木のテーブルに広げ、八歳のジーナは目移りしていた。森の広場は木漏れ日がちらちらと輝いている。
その横で、同級生のリュアは優しげに目を細め、細い筆を手に取って宝石のように散らばる青空のかけらたちに透かした。
「落ち葉の絵の具を、風に溶かして……」
「あっちの方がいい色があるんだけどなー」
木の葉のパレット――まだ落ちていない紅葉の葉や緑の葉を見上げてジーナが残念そうに呟くと、テッテ青年はこう語った。
「飛び立っていない子供の葉は、そのままにして下さいね」
次の刹那、ジーナの目の前を鮮やかな紅い葉が横切った。
「あの色!」
駆け出した小柄な少女はやがて木の葉に追いつく。リュアは不思議な絵筆を右手にしたまま、穏やかに微笑むのだった。
|