[月の雨]
朝方に雨が上がり、雲が割れて空が広がってゆく。
石畳の道のへこんでいる場所には水たまりが出来ている。
「よっと」
ジーナは水溜まりを飛び越え、リュアは避けて通った。
「あっ、お月様」
リュアが立ち止まって指さした。水溜まりには白い月が映っている。二人の少女たちがまぶしそうに空を仰ぐと、澄みきった浅葱(あさぎ)色の空の片隅に、沈んでゆく細い月が見えた。
「お月様には、湖のように雨水は溜まっていないんだね」
不思議そうに呟いたのはリュアだ。海から流れる冷たくも凛々しい冬の朝風に、星明かりのような銀の前髪をなびかせる。
「……んー、ほんとだ」
ジーナは少し考えた。太陽のようにきらびやかな金の髪が揺れる。その間に歩き始めたリュアが追いつき、追い越した。
「砂浜みたいに、水を通しちゃうのかな」
すると早足で歩き出したジーナが、リュアと並んで言う。
「うー、わかんない。ちょっとは溜まってるかも? あたしたちに見えないだけで。この道だって、そんなに溜まってないし」
「そうだね。それに、光ってるから、熱いのかも知れないね」
リュアの思いに、ジーナは自分の考えを重ねた。
「逆さまにした弓みたいな形。雨が桶みたいにたっぷり溜まりそうだけど……その秘密、テッテお兄さんに聞いてみれば?」
「うん」
朝の光に柔らかな頬を輝かせ、リュアが小さくうなずいた。
|