歴史学講義


§1.古代魔法帝国(※未整理)
テッテ ルデリア講座、第二回は歴史についてのお話です。講師は同じくカーダ師匠です。僕が助手を務めさせていただきます。
カーダ 編年体の歴史書をテキストとし、時間の流れに沿って話そう。場合によっては地図も用いる。
テッテ はい。長くなりそうですが、よろしくお願いします。
カーダ 神話は宗教学の時間に話すため、今回は除外する。ルデリア大陸に登場した最も古い国家は「古代魔法帝国」と呼ばれるものじゃ。
テッテ 詳しい説明を求めます。
カーダ ふむ。
テッテ(以下、未整理です……完成をお待ち下さい)
秋月 涼 現在の「死の砂漠」の辺りに、古代、強大な魔法帝国が栄えていた。栄華を極めたが、相次ぐ軍事魔法の開発と誤作動により滅んでしまう。緑の森は砂漠と化し、その文明は滅亡した。生き残った者は、魔導師として「古代人の島」でひそかに暮らしている。これにより、古代帝国時代は奴隷とされていた人間(ノーン族・ザーン族・ウエスタル族・黒髪族)が実権を握り、大陸の各地に集落を形成していった。
参考地図 世界全図
世界全図(主な町)
民族分布
三帝国時代
メラロール動乱以後
フレイド独立戦争以後
シャムル、ミザリアの独立以後


§2.大帝の世界統一(※未整理)
秋月 涼 古代魔法帝国の崩壊後、長きに渡る暗黒時代が続いていたが、キンガイア大帝によりルデリア世界が統一される。この年を大陸歴0年とする。


§3.三帝国時代(※未整理)
秋月 涼 大陸歴43年にキンガイア大帝の息子が亡くなると、統一国家は三つに分裂する。大陸の北西に興ったノーン族による知の国が「メラロール帝国」、大陸の北東に興った黒髪族による武の国が「ガルア帝国」、大陸南部に興ったウエスタル族とザーン族による魔の国が「マホジール帝国」である。最も力があったのはマホジール帝国であり、メラロール帝国とガルア帝国はやや弱い勢力で両者はほぼ拮抗していた。三帝国は各国境で睨み合うが、大きな戦争は起こらず安定した平和な時代が続く。大陸歴67年に、小国トレアンがガルア帝国領・南ガルアに併合されたくらいである。


§4.メラロール動乱(※未整理)
秋月 涼 大陸歴159年、家督争いでもめたメラロール帝国から、一部の派のものが「メラロール王国」として独立した。ノーザリアン公国ヘンノオ一世の力添えもあり、王国派は地滑り的勝利を収め、帝国派をオニスニ河まで追いつめるが、帝国派を助けるマホジール帝国軍により戦線は膠着する(大陸歴164年)。帝国派はリース王国と名を変え、最終的にはリース公国としてマホジール帝国の傘下に入った(大陸歴165年)。メラロール王は、王国独立に貢献したヘンノオ一世にノーザリアン地方を与えて「ノーザリアン公国」とし、ある程度の自治権・裁量権を認めた。その後、ガルア帝国とマホジール帝国も統治をスムーズにするため、各地域へ公爵・侯爵・伯爵などを派遣し、ある程度までの自治権を認めた。この方針によって、ガルア帝国の傘下に「南ガルア」「北シャムル」、マホジール帝国の傘下に「ゴアホープ公国」「シャムル公国」「ミザリア」「ミニマレス侯国」「ヒムイリア侯国」「リンドライズ侯国」「オレオニア辺境国」などが誕生した。


§5.フレイド独立戦争(※未整理)
秋月 涼 マホジール帝国の属国であるゴアホープ公国に支配されていたフレイド族に独立の機運が高まったが、指導者のドン・ガインが公国側によって処刑される(大陸歴189年)。これによってフレイド側は団結し、一斉蜂起し、フレイド独立戦争が始まった。厳しい冬将軍に勝ったのは、魔法の力に裏打ちされたゴアホープ公国・ミニマレス侯国の連合軍ではなく、フレイドの強靱な肉体だった。ミニマレス侯国の呼びかけで和睦が実現し、フレイド族はゴアホープ公国より正式に独立を果たす(大陸歴192年)。南北カイソル地区・リュフリア地区に成立した「フレイド公国」は、マホジール帝国の属国の一つとしてスタートしたが、大幅な自治権が認められていた。のち、大部分の領土を失ったゴアホープ公国は侯国に格下げされ、それに反発した侯国側は逆上してフレイド公国を攻めるが、返り討ちに遭う。ゴアホープ公国はマホジール皇帝によって取りつぶされ、その後がまとしてシャワラット侯国が成立した(大陸歴193年)。


§6.島国の独立(※未整理)
秋月 涼 巨大連合国家マホジール帝国の弱体化に伴い、各地で独立運動が盛んになる。大陸歴203年、マホジール帝国領シャムル公国(現在の南シャムル地区)が「シャムル公国」として独立。大陸歴216年には、マホジール帝国領ミザリアが「ミザリア国」として独立した。両国とも島国だったため、帝国の干渉をほとんど受けず、平和に独立を果たした。


§7.魔王と勇者(※未整理)
秋月 涼 シャムル公国の圧制に苦しめられていた夕闇族のアルペールが娘を殺されたことに怒り狂い、魂を邪神に売り渡す。アルペールは魔王を名乗り、大量の魔物を冥界から召喚し、シャムル島を占拠するかの勢いで進軍した。世界全体が緊張し、連合軍がシャムル島へ派兵される。ガルア帝国の皇帝であり、最優秀の剣術士であったヒャースが自らを剣の中に封印する。その「ヒャースの剣」を用い、伝説の勇者ルーファスが魔王アルペールを倒し、シャムル島は救われる。夕闇族への差別は完全に撤廃され、独立国家並みの自治権が認められる。


§8.ガルア帝国の滅亡(※未整理)
秋月 涼 皇帝ヒャースを失ったガルア帝国は後継者争いで迷走し、分裂する。ガルア帝国の治安を回復させるという名目で、中央山脈を越えたメラロール軍が攻め込み、ガルア帝国の帝都ガルアを占領してしまう。メラロール側の緩やかな統治により、争いに明け暮れた住民のほとんどはメラロール王国による属国化を支持する。これによって「メラロール王国領ガルア公国」が誕生し、帝都ガルアは公都センティリーバに改名する。メラロール側はガルア帝国の残党を辺境へ送り、そこへ「ルディア自治領」を成立させ、幼いヒュールを代表として自治権を与える。ガルア帝国領だった南ガルア地区、および北シャムル地区は、ガルア帝国復興のための黒髪族による国家「ポシミア連邦共和国」を興し、マホジール帝国の傘下だったフレイド公国およびシャワラット侯国を誘う。両国もなびき、ポシミア連邦は全十州によりスタートした(大陸歴244年)。


§9.ラット連合の成立(※未整理)
秋月 涼 ポシミア連邦の主導権は旧ガルア帝国の者たちが握り、フレイド族は軽視された。大陸歴251年、北カイソル州・南カイソル州・リュフリア州・ゴアホープ州・シャワラット州の五つの州は「ラット連合国」として独立を宣言し、それに反発したポシミア軍と激突する。結果、ラット連合側が勝利を収め、独立は承認された。ハーフィル州も「ハーフィル自由国」として独立させ、ここは緩衝地帯としてポシミア・ラットの二国共同統治とした。その後の大陸歴258年、シャムル公国は、ポシミア領の北シャムル州に侵攻・併合し、シャムル島の統一を果たす。ポシミア連邦は、沿海州・キルタニア州・内陸州の三州体制となり、弱体化が顕著になった。


§10.近年の独立傾向(※未整理)
秋月 涼 優秀な魔法使いが次々とメラロール市やエルヴィール町、モニモニ町へ亡命し、崩壊へ突き進むマホジール帝国。ウエスタリア自治領のロンゼ町において商業の才能でのし上がった若き指導者ズィートスンを、最後の切り札として大臣に採用したマホジール帝国は、皮肉にも見事に裏切られる。ズィートスンは権益を広げ、ロンゼ町を自らの名にちなんだ「ズィートオーブ市」と改名する。ついに、ズィートスンの統べるウエスタリア自治領は、マホジール帝国の傘下である周辺の小国(聖王領、リンドライズ侯国、ヒムイリア侯国)や商業都市(モニモニ町)を集めて「南ルデリア共和国」を成立させる(大陸歴290年)。マホジール帝国側は対抗する力が無く、南ルデリア共和国の独立を黙認せざるを得なかった。その二年後、絶海の孤島であり、マホジール帝国の庇護を受けていたフォーニア島のオレオニア辺境国が「フォーニア国」として独立する(大陸歴292年)。


§11.世界の現状(※未整理)
秋月 涼 現在のルデリア世界は三つの大国と、それ以外の小国によって成り立っている。最も力があるのは「メラロール王国」(ノーザリアン公国・ガルア公国・トズピアン公国を含む)であり、大陸の北半分を統治している。メラロール王国の本国はきわめて安全であるが、ノーザリアン公国は北方からの異民族や魔物の襲撃におびえ、北方将軍バラドーの率いる軍が公都ヘンノオ町に駐留している。ガルア公国・トズピアン公国は黒髪族の住む地域であるが、統治するメラロール側はノーン族である。今のところメラロール側の穏健な政治姿勢もあって住民側に独立の動きはないが、旧ガルア帝国の残党を封じ込めたルディア自治領の動きには神経をとがらせている。脆弱なトズピアン公国は、北の獣人領を傘下におさめたいと画策しているが、逆に獣人側の反発を招いている。
 近年の独立以来、商業の発展による資金の潤いによって発展著しいのが「南ルデリア共和国」である。ズィートスン氏を国家元首とする若い国は、弱体化したマホジール帝国の属国を奪うべく、虎視眈々と機をうかがっている。国家の副代表であるモニモニ町のモニモニ氏(本名不明)は非常に謎めいた若い指導者で、ズィートスン氏を影で支えている。
 大陸の東に君臨する三番目の大国が「ラット連合国」である。五つの州(北カイソル・南カイソル・ゴアホープ・シャワラット・リュフリア)からなるラット連合は、非常にバランスの取れた国家である。世界的穀倉地帯である南北カイソル地区とともに、文化の発展したエルヴィール町やシャワラット町を得ているのは大きく、今後の勢力拡大も予想される。フレイド族のテアズ氏と、ザーン族のシャワリン氏が二人三脚で国家の統治を行っている。
 以上が三つの大きな勢力である。それ以外の小勢力として、まずシャムル島の「シャムル公国」が挙げられる。念願の南北統一を果たし、魔王アルペールの危機を乗り切ったあと、平和な小国家として復興に励んだ。デリシ町は貿易で栄えている。しかし北シャムル地域には黒髪族が多く住み、統治側のザーン族と異なるため、黒髪族には不満がくすぶっている。
 南国は基本的に平和である。香辛料の貿易で利益を上げ、安定的な成長をとげているのが「ミザリア国」である。王室はカルム王、ミネアリス王妃、レゼル王子、ララシャ王女である。そして熱海の南東に浮かぶ新興独立国家「フォーニア国」も平和を謳歌している。
 最も不安定なのが、崩壊も時間の問題といえるマホジール帝国である。国を支えてきた高度な知識を持つ魔法研究家が他国へ流出し、山奥にある帝都マホジールの人口は激減している。未だに帝国の傘下であるリース公国のリューベル港による貿易収入が帝国の財政をなんとか支えているが、そのリューベル港は南ルデリア共和国の熱い視線と経済的圧力にさらされている。メラロール王国もリース公国を狙っており、小国リースを統治する二十一歳のリィナ公女(父である前代の公爵が若くして亡くなったため、暫定公爵に就任)の判断によっては軍事衝突も懸念されている。
 同じく、マホジール帝国の属国であるミニマレス侯国内部でも、どこの勢力につくかで対応が割れている。侯国の西半分を基盤とするマルス侯爵は、ミラス町を治めるエスティア家との連合を模索している。一方、ラット連合と国境を接する東半分に影響力を持つポーティル伯爵は、ラット連合の傘下に入るべきだとの持論を唱えている。
 全盛期の十州体制がわずか三州へと減ってしまった「ポシミア連邦共和国」では、今のところ目立った動きはない。が、彼らの最終的な野望は黒髪族の手によるガルア帝国の復興であり、メラロール王国内で自治権を与えられている旧ガルア帝国の残党「ルディア自治領」と結託する可能性も否定できない。そのポシミア連邦内部でも、トレアニア地方にはザーン族が多く住んでいるため、連邦側が統治を誤れば独立の機運が高まることもあり得る。トレアン王国が、旧ガルア帝国の属国に併合されて以来、トレアニア地方の独立は地元住民の悲願である。