(C)Ryo Akizuki
KeY: 講義

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「……というわけだ。魔術師ベイラーはこの研究に没頭し……」

 その日の午後の授業は「魔法史講義」だった。

 リンローナは最前列で、一生懸命にノートを取っている。

「ん?」

 教授が、急に顔をしかめた。

「……エレフィン君!」

 リンローナの横の席で、ナミリア・エレフィンが船を漕いでいる。

 ぽんぽんぽんと、リンローナは彼女の肩をこづく。

「ナミ、ナミ……起きなよ」

「……はい、すみません! もう食べ切れません!」

 ナミリアは飛び起きると、こんな台詞を大声で叫んだ。

 くすくすくす……。

 小さな笑い声が教室に響いた。

「あちゃー」

 リンローナはがっくりとうなだれる。

「あ、授業中だったんですか……あは、あは、あはは」

 ナミリアはようやく状況を理解し、ひきつった笑いをした。

 ……それは教授も同じことだ。
 
 一瞬の沈黙の後、老教授はありったけの声を張り上げる。
 
「廊下に立っとれ!」



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