2008年10月

 
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2008年10月の幻想断片です。

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 10月10日- 


 青いキャンバスに
 誰かがクレヨンで
 横長の白い雲を描いた

 それを誰かが動かして
 その形を誰かが変えて

 秋の空と風の物語は
 まだまだ続く
 


 10月 9日- 


 秋の花のささやかな香りが
 見えない音楽を奏でます

 野原から届けられた花の便りが
 優しく蜜蜂を呼び寄せました

 淡い青空のもとで
 


 10月 7日- 


[月光紡ぎ(1)]

 あの辺には池があるんだろうか。先月の望月の夜更けに、ちらちら揺れ動く光が見えたんだ。ランプの光ではなかった。
 でも全く腑に落ちない――あの辺りに池はなかったはずだし、実際に出向いて明るい時間に探してみても見つからなかった。
 どうやら今宵は満月で、しかも晴れている。外に出て目を凝らすと、また例の光が見える。すぐに確かめに行くことにした。
 


 10月 5日- 


 空はしだいに曇りとなった。対岸を見通せるナリア湖を横目に、乗合馬車は平坦な道を進んでいた。不規則な横揺れ・縦揺れの向こう、幌の前後に垣間見える湖には灰色の霞がかかっていた。あの向こうには魔法で出来た蜃気楼の城郭があるのだろうか。それとも故郷の風景が、子供の頃の時間か――。
 周りの三人の乗客もみな個人客で、私と同じように無口だ。
 どこまでが昼か、夕方なのか明確な区別がないまま、ルデリア大陸南東部・ラット連合ゴアホープ州は少しずつ暮れてゆく。完全な闇が支配する前には、馬車は終着の町に着くだろう。


2008/10/05
 


 10月 3日△ 


 すべての風がとまった。
 上り風が吹いて、一気に森の木の葉が舞い上がる――。
 




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