[雷鳴]
旅先の宿屋にて――。
刹那、部屋の中がまばゆく照らし出された。輝きは一瞬にして収束し、暗い部屋にランプの輝きだけが妖しく残される。
「ひゃっ!」
リンローナは反射的に身を縮めた。息を止めたかのような二、三秒の静けさの後、ドドォーンという音が地の底から轟いた。
「雷が空を切り裂く音ね」
姉のシェリアは窓の向こうを見ていた。まだ太陽は沈んでいないのに、空は真っ暗だ。時折、強い風が吹き込んでくる。
「さ、そろそろ次の〈波〉が来るわね」
シェリアが窓を閉めたとたん、前触れもなく始まった大粒の雨が無秩序に、一斉に屋根を叩き始めた。いくぶん遠ざかった雷鳴を聞きながら、リンローナは心を落ち着けて祈るのだった。
「どうか雷さんが悪さをせず、お空に還りますように……」
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