[特別な夕日]
夕日が斜めに射し込み、石造りの建物を淡い橙色に染めていた。海鳥が羽ばたき、雲一つない空を横切っていった。
市場から続く道を二人の少女が並んで歩いていた。それぞれの右手の籠には、南国の赤や黄色の果実が入っていた。
「いつもと同じ、穏やかな夕暮れだね」
レイナが言った。潮の香りが漂い、かすかな波音が聞こえていた。南国ミザリア島の庶民が住む地区だ。夜の帳が下りると星の饗宴が始まる。他の大人たちも家路をたどっていた。
家が途切れ、降り注ぐ夕日に目を細めて、ウピが言った。
「だけど、今日、ちょっと特別だよね」
「一年の最初の日だから?」
レイナが問うと、ウピはふいに立ち止まる。それからゆっくりと首を傾け、視線を上げて、どこまでも続く世界を仰ぎ見た。
「今日の空は、今日だけの特別な空だから!」
レイナは目を丸くして、足を止めた。その表情が和らいだ。
「そうだよね……この色も、この瞬間も、今だけなんだね」
左手を夕日にかざして、少女はまぶしそうにうなずいた。
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