魔法学講義


§1.魔法とは何か?
テッテ ルデリア講座、記念すべき第一回は魔法についてのお話です。講師はカーダ師匠が担当されます。僕は助手を務めます。
カーダ まずは「魔法とは何か?」ということから話せばならんのう。
テッテ そうですね。
カーダ 魔法とは、このルデリア世界に欠かせない重要な要素じゃ。世界に浸透した一つの技術である、といえるじゃろう。たとえば、剣術士は剣を巧みに操り、騎士は乗馬をこなす。鍛冶屋は金属からモノを造りだし、狩人は弓を使って狩りをする。
テッテ 魔法使いが魔法を使う、ということも、それと同じであると言うことですね。
カーダ まあ、端的に言えばそういうことじゃ。
テッテ しかし師匠。剣にしろ鍛冶にしろ、これらの技術は訓練さえ積めば誰にでも扱えますが、魔法はちょっと違いませんか?
カーダ ああ、そうじゃのう。確かに、魔法は万人に扱えるものではない。それなりの素質が必要じゃ。魔法を扱える素質があることを、つまりは「魔力がある」という。これは重要なので覚えておくように。
テッテ 僕らは魔力ありますよね。
カーダ もともと、魔法というものの大部分は、神が妖精族に与えたものじゃった。特に聖術・月光術・妖術・幻術なんかは、その典型じゃ。唯一、人間に与えられた魔法は、火炎・大地・天空・氷水の四魔術のみじゃ。
テッテ ……師匠、たいへん申し上げにくいのですが、話が横道にそれかかっています。
カーダ うむむ、そうか。魔法とは話しにくいものじゃな。どうしても神や種族、七力や神者が関わってきてしまうのう。
テッテ 色々、細かくセクション分けしてお話しすることにしましょう。


§2.魔法の種類
カーダ では、魔法にはどのような種類があり、どのような役に立つのか話そう。
テッテ そもそも魔法とはどのようにして与えられた技術なのか、そこから話していただけませんか?
カーダ さきほども少し述べたが、魔法とは神から与えられた技術じゃ。フレイド族や獣人族が強靱な肉体を持つ代わりに、神は人間や妖精族へ魔法を下さった。
テッテ 一番分かりやすいのは、聖守護神ユニラーダ様が妖精族にお与えなさった「聖術」ですよね。
カーダ そうじゃな。聖守護神様の司る「保守」的な力、転じて「再生」「治療」の内容を持つ魔法が「聖術」じゃ。今は妖精族だけでなく人間族にも広く普及しておる魔法じゃ。
テッテ 具体的に内容を教えて下さい。
カーダ 最も基礎的な聖術は、傷の治療を行う「ハロ」じゃな。聖術学院の生徒はこの「ハロ」から習うこととなる。痛み止めの「ハミラ」や、韋駄天の「スラバ」、あるいは邪悪なものに打撃を与える「セインティア」などが、ごく初級の聖術じゃな。魔法に対する壁を作る「バリズーン」も難しくはない。
テッテ 聖術学院や、魔法学院聖術科の卒業生なら、そこらへんの初級の聖術は全て扱えますよね。
カーダ そうじゃな。最も基礎となる治癒聖術「ハロ」などは、聖術の専門家でなくとも扱える場合が多い。その「ハロ」には、いくつかの上位版も存在する。上位版まで使えれば、一人前の聖術師といえるじゃろう。
テッテ 聖術は分かりました。では、それ以外について教えて下さい。
カーダ だんだん、ややこしくなるぞよ。心するように。
テッテ はい。
カーダ 次は、魔術・月光術・妖術・幻術を一挙に説明する。これらの系統の魔法は全て、最高神ラニモス様に与えられたものじゃ。
テッテ 七力(しちりき)の影響を受ける、七つの魔法系統ですよね。
カーダ そうじゃな。魔術を詳しく分けると四系統になる。つまり火炎魔術・大地魔術・天空魔術・氷水魔術の四系統じゃ。これに、さきほどの月光術・妖術・幻術を加えた七つの系統の魔法は、全て七力の影響を受けている。
テッテ 七力の詳しい話は宗教学の講義で致しますので、今回は軽く流します。
カーダ 七力とは、簡単にいうと虹の七つの色を反映した七つの力じゃ。赤は火炎、橙は大地、黄は月光、緑は草木、水色は天空、青は氷水、紫は夢幻の属性を表しておる。そしてラニモス様の七魔法は、火炎魔術は火炎、大地魔術は大地、月光術は月光、妖術は草木、天空魔術は天空、氷水魔術は氷水、幻術は夢幻の属性に対応しているのじゃ。
テッテ そのうち、魔術の四系統(火炎・大地・天空・氷水)は人間族へ、それ以外の月光術・妖術・幻術は妖精族へ与えられたんですよね。今でこそ、ごっちゃになってますけど。
カーダ この問題は、本当は「虹の七神者」や「聖王」などと一緒に話さなければならぬが、今回は省略する。いずれ宗教学の時間で扱う。
テッテ 分かりました。
カーダ ……どこまで話したかな?
テッテ 魔術の各系統までです。
カーダ ふむ。魔術は先に述べたとおり、四つの系統がある。代表的なものを説明しよう。火炎魔術の代表は「ドカ」じゃ。小さな炎を指先から飛ばすことができる。獣を威嚇したり、薪に火をつけたり、便利な魔法じゃ。
テッテ この「ドカ」には、上位版である「ドカドカ」などもありますよね。
カーダ 安易なネーミングじゃな。
テッテ まあ、神様が決めたことですから……。
カーダ 次は大地魔術。小さな土の弾を飛ばす初級の魔法から、果ては地震を起こすものまで、さまざまじゃ。天空魔術は主に風を扱う。小さな風を起こす「ヒュ」や、その上位版である「スーファ」などがある。
テッテ ふむふむ。
カーダ 意外と用途が広いのが氷水魔術じゃ。水を生み出す「シューヴェ」や、氷の矢を飛ばす「クォールン」に始まり、水を氷化させる「シュリームド」や、濃い霧の中に隠れる「フラジェーラ」など、色々なものがある。
テッテ いくつかの系統が混じっている特殊な魔術もありますよね。
カーダ そうじゃな。例えば「火の風」じゃ。火炎魔術と天空魔術の属性を半分ずつ持っておる。
テッテ 魔術の系統はだいたい理解しました。
カーダ 次は、妖精族に与えられた三系統の魔術じゃな。まずは「月光術」じゃ。これは別名「召喚術」とも呼ばれ、精霊界より精霊を呼び出すという特殊きわまる魔法系統。数ある魔法の中でも、最も難易度の高い魔法じゃ。
テッテ 扱いが難しいですし、危険度も高いですから、一般的ではありませんよね。ポシミア連邦共和国のレルアス村に月光術の専門家が集まり、研究を重ねていると聞きます。
秋月 涼 詳しくは、ルデリア小説『月の光に導かれ』をご覧下さい。
カーダ 次は妖術。これは草や木などの植物を操るものが多い。蔓を操る「マトゥージャ」を皮切りに、植物を生長させたり枯らしたりする魔法が主じゃ。その他、声を届ける「クィザーフ」、盗聴する「クァルーン」、相互伝達の「クィザロアム」なども妖術の範疇に含まれておる。最も普及しておる妖術は、照明術「ライポール」じゃ。便利なため、聖術科や魔術科の生徒らも教わっているようじゃ。
テッテ 最後に、幻術についての解説をお願いします。
カーダ 幻術は、名前の通り相手に幻を見せる魔法じゃが、幻を見せるところから転じて、相手の心を操る魔法も含まれておる。最も初級のものは睡眠妖術「ルゥネ」じゃ。その他、幻を作る「メムフェロ」や、それの上位版である「フォゴーレ」、あるいは言語翻訳の「フェミラ」などが存在する。
テッテ ……ラニモス様の七魔法は以上ですね。お疲れさまです、師匠。
カーダ あとは少数の特殊な魔法じゃ。まずは呪術。これは邪神ロイド様の力を司り、破壊や死をもたらすものが多く、現在は使用禁止扱いになっておる。
テッテ 他にはありますか。
カーダ 最近、天候を操る天候術というものが作られたという噂を耳にしたが、詳しいことは良く分からぬ。長くなったが、魔法の系統については以上じゃ。
テッテ 続きまして、魔法とはどのような経過を経て発動するのか、呪文や魔源界・魔源物質との関わりに触れながら、お話しいただきます。
カーダ 少々疲れた。テッテよ、茶を煎れるのじゃ。
テッテ 分かりました。お持ちいたします。


§3.魔法の発動(※未整理)
秋月 涼 魔源物質、魔源口。魔法の呪文には、二つの効果がある(古代語による命令が含まれている)。一つは、魔源界への魔源口を開くこと。もう一つは、その魔源口から流れ出してくる魔源物質を組み替え、魔法という現象に変えること。ただし月光術の呪文は、精霊界への魔源口を開け、精霊を召喚する意味が含まれる古代語である。


§4.魔力の有無(※未整理)
秋月 涼 ルデリア世界は魔法のおかげで一部では高い文化を誇っている。妖精系の種族の者は特に魔法が得意で、次いで妖精の血が混じるリィメル族。人間族の中では、ウエスタル族が一番得意であり、次いでノーン・ザーン族。黒髪族やフレイド、獣人にはまだ魔法文化がそれほど浸透しておらず、文化度はそれほど高くない。