黄緑の光 〜
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秋月 涼 |
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まばゆい木漏れ日が、木々の枝と枝、葉と葉の間からあふれ出して降り注ぐ。まぶしそうに額に手を当てて、十四歳の村娘、シルキアが言った。 「黄緑の光……」 ルデリア大陸は南の方から、また海に近いところから春が染み込んできていた。山奥のサミス村はまだ寒暖の差が激しかったが、光はもうすっかり春の日差しだった。 「池とか、湖の中だと、青い光になるのかなあ」 木の幹に身体を預けていたシルキアの目の前を、まるで風に吹かれたリボンのように、黄色の蝶々がひらひらと飛んでゆく。 「あっ」 思わず手を伸ばしかけた時、掌につかんだのは――。 つくしを起こし、花を目覚めさせる一陣の春の風だった。 「シルキア〜、どこなのだ〜っ?」 三つ年上の姉のファルナの呼ぶ声が聞こえてきた。シルキアは身を起こし、右手を口に当てて、高らかに声を張り上げた。 「お姉ちゃ〜ん、あたしはここにいるよ!」 それから少女は微笑み、樹を仰いで小さく優しく語りかけた。 「この季節の始まりに、ね」 風が吹いて新緑は揺れ、波のように返事をするのだった。 | ||
(了) | ||
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