どこを向いても大海原(おおうなばら)が続いている。 「メラロール王国は遠いなあ」 リンローナは薄汚れた本を開いた。 「天候術、か……」 魔法を紹介するこの本は、彼女のお気に入りである。 暇なので音読してみる。 「……天候術は、才能のある一握りの者にしか扱えない。 多大な魔力を消費するため、うまく使いこなせる者はその中でもごく少数である。 その〈選ばれた術者〉は、 自然の中でも最も扱いにくいと言われる〈天候〉を操ることが出来る。 晴れ、曇り、雨、雪、雷、風、霧、ひょう……。 日照りの地に、恵みの雨を。 祭りの日に、雲を消し去る。 ……ただし〈南国に雪を降らせる〉等の無理をすると 魔力の消費が大きすぎ、術者の生命が危ぶまれるであろう」 「こういう時に天候術があれば便利よね」 「あ、お姉ちゃん」 いつの間にか、横にシェリアが座っていた。 姉は上を指さす。 「これから大嵐が来るそうよ。心配ね」 「あれ? さっきまで晴れてたのに」 いつの間にか、黒雲が空を覆っている。 ……ぽつり。 「さあ、船室に戻りましょ」 シェリアが言った。
★STORYs-ルデリアの全体像

