2009年 6月の幻想断片です。
曜日 |
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気分 |
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△ |
− |
○ |
◎ |
☆ |
6月28日− |
[いずこも同じ]
「めんどくさいわねぇ」
そう言って髪を掻き上げるのがシェリアの癖だ。
「仕事なんて、めんどくせーもんだろ?」
悟ったかのように問うと、目の前の女魔術師は俺の方を鋭く睨みつけて、胸を張り、こんな事を言ったのだった。
「知ってるわよ。だけど一言言わなきゃ気が済まないわけ」
「うん、そうだよ〜。お姉ちゃんは分かってるよ」
シェリアの妹のリンローナからも反撃に遭い、俺はふてくされて、ついこんなことを口走ったのだった。
「何だよそれ。めんどくせぇ奴だなぁ」
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6月27日− |
[風の種]
「何をしたの?」
彼女が何かをふりまいたので、見上げた僕は訊ねた。
「風の種を蒔いたの」
そう言ってから、彼女は枝に腰掛けたまま足を組み替えた。白いスカートが揺れ動いた。
「えっ、風って種から生まれるの?」
「種から生まれる風もあるわ」
彼女が答えた。その言葉自体、一つの微風だ。
「そう。来年の今ごろ、きっと強い風になって帰ってくるわ」
僕は種の飛ばされていった森の果てを見つめた。
それは時間という河の、未来という名の方角だった。
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6月16日− |
赤紫の黄昏を思うように
冴えわたる朝を願うように
灰の空から色を掬って
紫陽花は鮮やかに染まる――
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6月 5日− |
光の絨毯を敷いた朝に
東の空の果てで
森の碧のカーテンを見下ろし
翼をはためかせて腕組みをする
翼人(よくじん)はどこにいるのだろう――
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6月 1日− |
あの日、記した言葉が
雨に打たれ、風に吹かれて
だんだん薄くなってゆく
けれど、どんなに薄れても
消えてしまうことはない
だから私は今日この日にも
ページを繰って記憶を記す
胸の奥の、心のノートに
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