少年たちはリンローナと同じくらいの歳である。 男は叫び、彼らを睨む。 「何の真似だ! この娘が殺されたいのか!」 剣を持っている方の少年が口を開く。 「その女が殺されようが殺されまいが、俺たちには関係ねえ」 「えっ……」 (この人たち、あたしを助けてくれるんじゃないの?) とんでもない国に来てしまった。 リンローナは怯え、小刻みに震えている。 その時。 「……でもよ、強盗は気にくわねえ」 さっきの少年はこう付け加えた。 地面にランプを置きながら、もう一人の少年も言う。 「大人なのに見苦しいですよ」 「ふざけるな!」 男は、リンローナの首筋にナイフをあてる。 「きゃああぁ!」 鋭い痛みを感じ、硬直するリンローナ。 しかし、次の瞬間に悲鳴をあげたのは男の方だった。 「ぐわっ……目が見えん!」 ランプを下ろした少年が、ポケットからさっとパチンコを取り出し、 素早い動きで男の目を狙ったのだ。 見事命中! 男はナイフを落としてもがき、リンローナはようやく自由になった。 「早くこっち来いよ」 剣を持つ少年が、リンローナに声をかける。 「あたし……」 リンローナは恐怖で身体に力が入らず、動くに動けない。 「奴が起きあがりますよ!」 ランプを持ち上げ、少年が警告した。 もう一人は剣をしまい、舌打ちする。 「ちぇっ……仕方ねえ。俺にちゃんとつかまってろよ!」 彼は、まだ震えているリンローナを背負った。 そして相棒に呼びかける。 「タック、ランプの準備は?」 「完了です! ケレンス、行きましょう!」 男から逃れるため、二人は全速力で駆け出した。 早まる鼓動が、背中のリンローナにも伝わる。 闇の中、夢中で走り続ける少年たち。 角を曲がると、大分華やかな地区に出た。 「はあはあはあ……もう、この辺でいいでしょう」 「ああ……」 彼らは走るのをやめ、苦しそうに膝をつく。 その間、リンローナはぽたりぽたりと少年の背中に涙を落としていた。 「おい、おまえ。助けてやったんだ。もう泣くなよ」 リンローナを背負っていた少年は、優しく声をかけた。 緊張の糸が切れ、今度は大声で泣き出すリンローナ。 ……大きな街での、ちいさな出会いだった。 しかし、これが彼らの未来を大きく変えることになる。 「ありがとう……あたし、怖かった」 「本当は俺だって、ちょっと怖かったんだぜ。 まだまだ駆け出しの冒険者だからな」 ケレンスはそう言って、リンローナの頭を撫でる。 「夜の港は危険です。気を付けて下さい」 タックの忠告に、リンローナは明るくうなずく。 「うん!」 夜の涼しい風が通り過ぎて行く。 タックはランプを消し、夜空を見上げた。 「今夜は星が綺麗ですね」
★STORYs-ルデリアの全体像