夕焼け色 〜
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秋月 涼 |
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薄曇りの朝は、空に面白い雲を探せない。そのかわり、並木道の木々の周りに散らばり始めている赤や黄色の落ち葉を見つけた。歩きながら、少し先の足元を指さして声をかける。 「だんだん秋らしくなってきたね〜」 すると、私よりも頭ひとつぶん背の高いセアラは、穏やかな微笑みを浮かべて私を見つめ、軽くうなずいたのだった。 「ええ」 友の、若くてみずみずしい黄金(こがね)の前髪が揺れた。 それからしばし黙って、私たちは風と戯れる。もちろん、辺りを満たしている澄んだ空気とも。あちこちから聞こえる小鳥たちの歌声は本当に嬉しそうだ。 私たちが住んでいる〈リース公国〉の公都、風吹く丘の〈リースの町〉にも、次の季節は確実に近づいてきている。 「昨日の夕焼けで、染めたみたいな色……」 今度、先に喋ったのは、セアラの方だった。 少しくすんだ黄色の落ち葉を、細くてきれいな人差し指で示して、彼女はゆったりとした口調で言った。それは不思議な形をしていた。雲も落ち葉も、それぞれ個性があるなあと思った。 広い並木道は空いている。時折、町の誰かとすれ違う。こうして歩いてゆくと風になったみたいな清々しい気持ちになれる。 「秋の夕焼けは、特別だよね〜」 私は応えた。 | ||
(了) | ||
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