(C)Ryo Akizuki
KeY: 船出

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 モニモニ港に、大きな帆船が停泊している。

 船長はミシロン・ラサラ。リンローナの父親だ。

 ラサラ家は総出で、父の船出を見送る。

「お父さーん! 早く帰ってきてー!」

 八歳のシェリアが叫んだ。

 船上の父は身動きひとつせず、自分の家族をじっと見下ろしている。

「お父さん、行かないで! 行っちゃやだよ!」

 リンローナは母の胸で泣きわめいている。

 母も、父と同じく無言だった。

 父は静かに右手を挙げた。

 船員が帆を張る。

 春の風が、白い帆を膨らませる。

 父の、薄紫の髪がゆれている。

 碇が上げられる。

 桟橋に結びつけたロープが、徐々にほどかれる。

 ……青空の下、船はゆっくりと動き始めた。

「あなた!」

 今まで無言だった母が、前に歩み出る。

 父は、右手を額にあてて敬礼のポーズをとる。

 ……春は、

 いつの時代でも、どんな世界でも、

 出会いと別れの季節なのだ。



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帰り道    春の陽

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