(C)Ryo Akizuki
KeY: ご用件

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「あれ、人間ですか。珍しいですね」

 メルファは冷静に言った。

「あの……」

「人間が訪ねてくるのは、実に何十年ぶりです」

「はじめまして、リンローナといいます」

「そうですか。ご用件は?」

「森の中で、道に迷ってしまって」

「……われわれメルファ族は、人間に対し、余り良い感情を抱いていません。

 何故だか知っていますか?」

「はい。人間が、メルファの森を勝手に開拓したからです。

 本当にごめんなさい」

 リンローナは深くお辞儀をした。

「その通りです。……ま、いいでしょう。

 今夜だけは泊まっておゆきなさい。

 明日になれば、森の外に案内してあげます」

「ありがとうございます!」

 リンローナは嬉しそうにお礼を言ったが、

 メルファは表情一つ変えない。

「さ、中に入って」

「はい」

 木のドアが、カタンという音を立てて閉まる。



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