準備をすませ、宿の前で待機する。 「みんな、忘れ物はないか?」 冒険者たちのリーダー、戦士のルーグが訊ねた。 「あ、ごめん。ちょっと待ってて」 リンローナは、階段をコトコト昇っていく。 寝室に着くと、宿の娘が掃除を始めていた。 「あれ? リンローナさん、どうしたのだっ?」 「窓辺にあった、白いお花の種……」 「あっ、そうですよん! 今すぐ用意するのだっ」 リンローナは宿の娘と、ある約束をしていた。 ……ここに泊まった記念として、お花の種をもらうことを。 「はい。これですよん」 リンローナは小さな袋を受け取った。 中には、細長い種が十粒ほど入っている。 「ありがとう!」 「すずらんの種、大切にして欲しいのだっ」 「うん! ……あたし、遠い街に蒔こうと思ってる。 あたしたちの、旅の足跡として……」 「とっても素敵ですよん」 「おーい、リンー、もうそろそろ行くってよー」 窓の下でケレンスが呼んだ。 「……行かなきゃ」 「うん」 「短い間だったけど、ファルナさん、どうもありがとう」 「またサミス村に来て欲しいのだっ! 一緒に遊ぼうですよん」 「うんっ!」 二人は約束の握手を交わす。
★STORYs-ルデリアの全体像

