助けを呼ぶためにナミリアが教室を出ようとした、

　まさにその瞬間。

　燃えさかる黒い石から、再び閃光が走った。

「ひゃあっ！」

　石は、ゆっくりと宙に舞い上がる。

「何なの？　何が起こるの……？」

　リンローナは目をぱちくりさせている。

　それをあざ笑うかのように、くるくると回り始める黒い石。

　鋭い光を発しながら、膨らみ、縮まり、だんだんと形を変えてゆく。

　生徒たちは、かたずを飲んでその光景を見つめる。

　……炎はいつの間にか消えていた。

　変形し、縦長になった石の四方から、細い棒が伸びていく。

「手足？」

　その姿は、昔、何かの本で見たことがあった。

　細い耳、長い爪、裂けた口、小さな身体……。

「これは、もしかして……」

　ゆっくりと開かれる、二つの瞳。

「……悪魔だ！」