(C)Ryo Akizuki
KeY: 正体

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「……ふにゃあ……っ」

 シェリアは訳の分からない寝言を口走っている。

「お姉ちゃん! 起きてよお! 助けて!」

 ついにリンローナは叫び声をあげる。

「ふあっ……?」

 びっくりして飛び起きた、姉のシェリア。

 寝ぼけ眼の彼女は、かなり不機嫌そうだ。

 もともと寝起きが悪いうえ、こんな深夜に……。

「何考えてんのよっ! まだ真っ暗じゃないの!」

「お姉ちゃん、あれ、あれ……」

 リンローナは震える指先で、近づいてくる赤い眼を示した。

「はあ?」

 シェリアは布団から這い出ると、スタスタ歩いていく。

 途中で大あくびをひとつ。

「ふぁ〜あぁ」

 再び歩き出し、寝癖のついた髪の毛を大きく掻き上げる。

 赤い眼の前まで来ると、彼女はしゃがみ込んだ。

 そして何かを持ち上げ、こちらに戻ってくる。

 ……リンローナは緊張して、ごくりとつばを飲み込んだ。

 一瞬の静寂。

「ふざけないでッ、ばか!」

「きゃあっ!」

 シェリアは急に怒鳴り、リンローナの布団の上に「何か」を投げつけた。

 リンローナは驚いて、身を縮める。

 その「何か」は温かく、かなりの重さがあり、

 リンローナの布団の上でうごめいている。

「くだらない事で、こんな時間に!」

 吐き捨てるように言うと、シェリアは再び布団に潜り込んだ。

 リンローナには、まだ正体が分からない。

 ゆっくりと、それを見つめる……。

「にゃあ」

 猫だった。

「よかった……」

 ほっとため息をつくリンローナ。

 その横で、シェリアは早くも寝息を立てていた。 



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