(C)Ryo Akizuki
KeY: お天気

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 鐘が鳴り響く。

 生徒たちのため息が一斉に吐き出され、

 教室の空気が緩んだ。

「では、また来週。よく予習しておくように」

 教授が言い、こうして歴史の授業が終わった。

「う〜んっ」

 大きく伸びをするリンローナ。

 教科書をまとめて鞄にしまい、帰り支度を始める。

「さあ、帰ろっと」

 これが今日の最後の授業だったのだ。

「じゃあねー」

「また明日」

 友達に手を振り、教室を出ると、

 石造りの廊下は太陽の光を浴びてひときわ輝き、

 はるかに真っ直ぐ続いている。

「いいお天気!」

 まぶしくて目を細めるリンローナ。

 微風が通り過ぎ、彼女の薄緑色の髪をなでていった。

「天の海で泳げたら、気持ちいいだろうなぁ」

 立ち止まり、青空を仰ぐ。

 ……その時。

 太い石柱の背後からナミリアが顔を出して、

「リンローナぁ……」

 と、弱々しい声でつぶやいた。

「あ、ナミ!」

 リンローナは驚きの声をあげて柱に駆け寄り、

 気まずそうに舌を出した。

「ごめんごめん。ナミのこと、すっかり忘れてた」

 それを聞いたナミリアは、頬を膨らませて抗議する。

「もぉ〜。『ごめんごめん』じゃないよぉ。

 ひどいなぁ、大親友を置き忘れるなんて」

「えへっ。ほんと、今日はついてないね。ナミ!」

 リンローナは口元を緩め、明るく微笑んだ。

 ナミリアは対照的にがっくりとうなだれ、

 これまでの自分の失敗を思い返す。

「まずは、授業中の居眠りを注意されて……」

「それから、鞄をなくしたよね」

 リンローナが嬉しそうに付け加えた。

 一瞬の静寂のあと、ぱっと顔を上げるナミリア。

 遠い空に輝く白い雲を見つめて、

 彼女は思いきり叫んだ。

「で、リンはあたしを忘れて帰っちゃうしね。

 あはははっ!」

 最後は笑顔になる。

 一方のリンローナは、まぶしそうに手をかざし、

 穏やかな口調で語った。

「空って、あたしたちに元気をくれるんだね」

 ……しばらくの間、並んで空を見上げていた二人。

 黄色い太陽が薄雲に隠れ、直後、再び顔を出した。

 リンローナとナミリアは同時に叫ぶ。

「あっ。お日様がウインクした!」

 声がぴったり重なり、ささやかな協和音が生まれる。

 すると、旅の微風がそれをつかまえて、

 空のはるか彼方に運んでくれた。

 二人は顔を見合わせて、また笑った。



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