ナルダ村に小さな喫茶店ができた。
この辺りでは珍しい、魔女の家系である。
「どいてどいてーっ!」
ほうきではなく、なぜか鋭い槍に乗り、曲がりくねる村の小道を低空飛行しているのは、そこの喫茶店の孫娘、ナンナだ。
当分の間、祖母のカサラに〈飛行〉を禁じられ、ほうきを隠されてしまったナンナは、とある場所で騎士の槍を見つけた。
槍はほうきよりバランスが取りやすが、重量はかなりあり、高く飛べぬ。しかもナンナは刃先を前にし、柄に乗っている。
彼女は〈空飛ぶ槍〉と化したのであった。
そして、向こうの通りから友のレイベルが現れる。
楽天家のナンナも、さすがに悲鳴をあげた。
「きゃあぁーっ!」
思わず柄にしがみつき、重心が前にかかる――。
――次の瞬間、槍は深々と地面に突き刺さっていた。
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