2011年 2月の幻想断片です。
曜日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
天 |
土 |
夢 |
気分 |
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× |
△ |
− |
○ |
◎ |
☆ |
2月19日− |
「夏の花が咲いたぞよ」
カサラ婆さんが部屋の窓際に置いた鉢植えを指さした。そこには冬の温かな光を浴びて花開いた、夏の桃色の花が見えた。
「何の魔法を使ったの?」
そう問うた孫娘のナンナに、カサラ婆さんはきっぱり言った。
「魔法でも何でもない、これは花が自ら生きる力じゃ」
「え〜?」
ナンナは驚いて瞳をまばたきしていたが、おもむろに鉢植えに顔を寄せ、若干色の薄い桃色の花にじっと見入るのだった。
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2月15日− |
雪のあかりに
光がともった
冷たい黄金色の
平原は続いてく
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2月13日− |
雪の通り過ぎた後、凍りついた空は満点の星だった。
「空気が冴え渡ってる」
シェリアの話し声は白い尾を引いて天に昇っていった。
「ああ」
ルーグの返事も、冷えた風の中で二つの銀の音符になる。
雪の名残か、メラロール市の夜はしっとりと湿っていた。
天の星たちはどこまでもずっと高かった。
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2月10日− |
凍りついた灰色の空から
雪の種が降ってくる
ある日は花びら牡丹雪
ある日は穂のように
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2月 8日− |
春の芽が
冬のたまごの中で
育まれる
曇り空の
薄明かりの下で
冷たい風の懐で
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2月 3日− |
「どんな白よりも白い、白の中の白」
レイベルが穏やかに言うと、ナンナは首をかしげた。
「白ぉ?」
「ナンナちゃん。なんでもない言葉も、魔法だと思うの」
賢そうな黒い瞳を輝かせて、レイベルが語った。
「だって、その言葉を言えば、聞いた人の頭の中で……みんな違ってるけどそれぞれに正しい〈白〉が生まれるんだもの!」
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2月 2日− |
夜を満たして
夕暮れの空に
夜に浸して
朝焼けの石を
夜と戯れ
時のまにまに
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2月 1日− |
「お姉ちゃん」
「何」
ランプを消した暗い部屋の中で、姉の言葉が染み渡った。
冷え切った布団に身を埋めて、リンローナは語った。
「微笑んでベッドに入れる日は……」
姉はその先を邪魔しないで待つ。冷気の中で、建物がわずかにきしんだ。
「すっごく、幸せだったと思うんだ」
「そう。今日のあんたみたいにね」
姉のシェリアが穏やかに伝える。
リンローナは泣き笑いのような小さな声をあげた。
「ふふっ」
満ち足りた誕生日のお開きを祝福するかのように、窓の外では銀の星が流れた。
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