2011年 2月

 
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2011年 2月の幻想断片です。

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  2月19日− 


「夏の花が咲いたぞよ」
 カサラ婆さんが部屋の窓際に置いた鉢植えを指さした。そこには冬の温かな光を浴びて花開いた、夏の桃色の花が見えた。
「何の魔法を使ったの?」
 そう問うた孫娘のナンナに、カサラ婆さんはきっぱり言った。
「魔法でも何でもない、これは花が自ら生きる力じゃ」
「え〜?」
 ナンナは驚いて瞳をまばたきしていたが、おもむろに鉢植えに顔を寄せ、若干色の薄い桃色の花にじっと見入るのだった。


2011/02/17
ナンナ カサラ
 


  2月15日− 


 雪のあかりに
  光がともった
   冷たい黄金色の
    平原は続いてく
 


  2月13日− 


 雪の通り過ぎた後、凍りついた空は満点の星だった。
「空気が冴え渡ってる」
 シェリアの話し声は白い尾を引いて天に昇っていった。
「ああ」
 ルーグの返事も、冷えた風の中で二つの銀の音符になる。
 雪の名残か、メラロール市の夜はしっとりと湿っていた。
 天の星たちはどこまでもずっと高かった。

シェリア ルーグ
 


  2月10日− 


 凍りついた灰色の空から
 雪の種が降ってくる
 ある日は花びら牡丹雪
 ある日は穂のように
 


  2月 8日− 


 春の芽が
 冬のたまごの中で
 育まれる
 
 曇り空の
 薄明かりの下で
 冷たい風の懐で
 


  2月 3日− 


「どんな白よりも白い、白の中の白」
 レイベルが穏やかに言うと、ナンナは首をかしげた。
「白ぉ?」
「ナンナちゃん。なんでもない言葉も、魔法だと思うの」
 賢そうな黒い瞳を輝かせて、レイベルが語った。
「だって、その言葉を言えば、聞いた人の頭の中で……みんな違ってるけどそれぞれに正しい〈白〉が生まれるんだもの!」

レイベル ナンナ
 


  2月 2日− 


 夜を満たして
  夕暮れの空に
 夜に浸して
  朝焼けの石を
 夜と戯れ
  時のまにまに
 


  2月 1日− 


「お姉ちゃん」
「何」
 ランプを消した暗い部屋の中で、姉の言葉が染み渡った。
 冷え切った布団に身を埋めて、リンローナは語った。
「微笑んでベッドに入れる日は……」
 姉はその先を邪魔しないで待つ。冷気の中で、建物がわずかにきしんだ。
「すっごく、幸せだったと思うんだ」
「そう。今日のあんたみたいにね」
 姉のシェリアが穏やかに伝える。
 リンローナは泣き笑いのような小さな声をあげた。
「ふふっ」
 満ち足りた誕生日のお開きを祝福するかのように、窓の外では銀の星が流れた。

リンローナ シェリア
 




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