……穏やかな海。 帆船は、その上をなめらかに滑っていく。 「あ、ナホトメさん、おはよう」 船室から出て、日の出を眺めていたリンローナ。 その脇を、船員のナホトメが通りがかった。 「おはようさん、リンローナ嬢ちゃん。ずいぶん早起きだね?」 「うん。目が覚めちゃって」 一陣の朝風が、リンローナの上を通り過ぎてゆく。 その度に、透明がかった緑色の髪がゆれる。 「船上の生活、もう馴れたかい?」 ナホトメ青年が訊ねた。リンローナはうなずく。 「大分、馴れてきたよ」 「そうかい。それはよかった」 「船乗りさんたちのお陰だよ」 「あはは、ほめられると照れるな。 でも、船乗りたちを指揮しているのは、君の父さんだぜ」 「あっ、そうかぁ」 リンローナは微笑んだ。 「……じゃあ、そろそろ朝食の準備をしてくる。待っててな」 「うん!」 ナホトメは食堂の方へ歩いていく。 ……波は相変わらず、朝日を浴びてきらきらと輝いていた。
★STORYs-ルデリアの全体像