姉を起こさぬよう静かに着替え、リンローナは部屋を出る。 この宿は二階が寝室、一階が食堂になっている。 階段をとことこと降りる。 「おはようございまーす」 厨房で朝食を作っている、宿の娘に挨拶をした。 リンローナよりも年下だが、かなりしっかりしている。 彼女はにこやかに笑い、挨拶を返した。 「おはようございます。……早いですね」 「下から、いい匂いがしたんだもん」 「……リンローナさんって、お料理上手なんですか?」 「え、誰に聞いたの?」 「昨日の夜、ケレンスさんに」 「……もう、ケレンスったら余計なこと言うんだから」 「『リンの料理は最高だぜえ……』って。 ケレンスさん、ちょっと酔ってましたよ」 「夜はこの食堂、酒場になるんだよね。 昨日はお客さん、多かったね」 「はい。おかげさまで」 その時、娘の姉が二階から降りてきた。申し訳なさそうに言う。 「朝食まで、もう少しかかりそうですよん。ごめんなさい」 リンローナは首を横に振った。 「ううん、平気だよ。それにあたし以外、まだ誰も起きてないし」 「そうですね」 宿の娘がうなずく。 「あたし、ちょっと散歩してくるね」 リンローナは木のドアを開け、表に出た。
★STORYs-ルデリアの全体像

