「あの……」 「どうぞ、中に入って下さい」 「え?」 リンローナは驚いた。 学院で〈妖精族は一般的に人間を嫌っている〉と習ったのを思い出す。 だが、このメルファは玄関で手招きをしているのだ。 「さあ、遠慮しないで」 「……はい、お邪魔します」 訳が分からないまま、リンローナはメルファの家に上がった。 独特の、木の香りが漂っている。 「そこにお座り下さい」 「はい……」 「そんなに緊張しなくてもいいですよ」 「は、はい」 「ふふふ……。今、お夕飯を持ってきます」 メルファは奥の部屋に歩いていき、見えなくなった。 (どういうことなんだろう?) リンローナの頭の中を、疑問符が駆けめぐっている。 「ん? いいにおい……」 メルファが、お皿とスプーンを運んできた。 ……中身は温かいスープ。 「おいしそうですね」 「どうぞ、お召しあがり下さい」 「え? 頂いていいんですか?」 「もちろんです」 その時、リンローナのお腹がグゥーッと鳴った。 「あ、あのぅ……すみません、いただきます」 「ええ」 リンローナはそのスープを口に含む。 「……おいしい!」 「それはよかった。作った甲斐があります」 結局、リンローナはあっという間に平らげてしまった。 「おかわりもありますよ」 「そんな、おかわりなんて……」 「本当にいいんですか?」 「あの……」 「わかりました。もう一皿お持ちします」 「……すみません」 メルファは何もかもお見通しのようだった。 辺りには、食器とスプーンのふれあう音、スープをすする音だけが響く。 静かな食事が終わり、リンローナはお辞儀をした。 「本当にごちそうさまでした」 「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方です」 「え?」 「わざわざ、こんな所まで来ていただいたのですから。 私が魔法でお呼びしたのです」 「本当ですか?」 「実は、お願いがありまして……」
★STORYs-ルデリアの全体像

