潮風が流れていく。 港に、異国の香りを運んで来る。 ……リンローナの故郷・モニモニ町は、貿易で栄えている商業都市。 中でも、港湾地区の発展はいちじるしい。 「あっ、お母さん。お船だよ」 リンローナと母は、二人で海辺を歩いている。 父との別れから一ヶ月が過ぎ去り、町は春の真っ盛りだった。 「お父さん、元気かなあ?」 「……ええ。もちろんよ」 母は優しく笑った。 「リンローナねえ、大人になったらね、コックさんになるんだ」 「コックさん?」 「それでね、お父さんと一緒にお船に乗って、世界中を旅するの」 「ふ〜ん、いいわね。……お母さんも連れてってくれる?」 「うん!」 波止場には、今日も大きな船が停泊している。 南からの、香辛料・綿織物を運ぶ船。 北からの、木材・毛皮を運ぶ船。 二つの流れが、この町で交わる。 だから商業が盛んなのだ。 父もこの流れに便乗し、一船員から船長へと出世を果たした。 その代わり、遠くへの航海が多くなる。 (子供たちを置いて……。家計は楽になったけど、本当にこれでいいのかしら) 無邪気なリンローナを見て、母は時々こう思う。
★STORYs-ルデリアの全体像

