[喪失と獲得(1)]
夜の中を降り続く雨が、静かに木々の壁を、年月を経た太い幹を、枝先の木の葉を打っている。それは時折強まったり、弱まったりを繰り返しながら、不思議に長い間、奏じられている。
(屋根って、こんなに素晴らしいものだったんですね)
消えかかったランプの明かりでは、建物の天井はぼんやりとしか照らし出せない。ベットに仰向けに横たわって、まるで今宵の夜空に繋がっているかのようなその闇の深淵を見つめ、オーヴェルはぼんやりと考えていた。すでに今日の研究も、質素な山の食事も、眠る支度をも終えて、彼女は毛布をかけている。
雨が降る前、溜めた雨水を薪で温め、それを冷まして湯浴みをしたので、身体の奥にはまだほのかな温もりが残っている。
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