[風の丘の暮れゆく秋]
秋の終わりの曇り空が公都リースの町を覆い、色づいた木の葉もくすんで見える。涼しい西風がなだらかな丘を駆け上がってゆくと、木の葉が少しずつ音を立て、乾いた唄を歌った。枝先に残るものは揺れ動き、地面に残るものはカサカサと流れる。
内陸の街道上、帝都マホジールから港町リューベルに至る交通の要衝にリースの町がある。城壁の外にあたる新市街――そのまた東の町外れの出来事だった。
「でさぁ……」
「おう」
丘陵地を縫う小道を、十歳になるならぬの少年たちが七、八人、早足で降りて来た。土を踏む足音が入り乱れる。背の高いの低いの、小太りな子・痩せた子、帽子をかぶったの、小枝を剣のように掲げる子、とさまざまだ。
ふと、風が凪いだ。それに歩調を合わせるかのように、最後尾の一人、顔が長くひょろりとした子供が立ち止まる。
「う〜んっ」
足元に広がるリースの町を見ながら、彼は大きく伸びをした。
「ほんと、いい所だよなぁ〜」
「そりゃそうだ!」
先頭が、手にしていた木の枝を薄曇りの空に突き出す。
「リースが世界一の町だぜぇ」
「おっ……おうよ!」
ひょろ長が腕を掲げると、仲間から明るい笑い声が起きた。
西風を受けるリース町は風車が多く〈風の町〉〈風車の町〉と呼ばれている。ラディアベルク家の治める古(いにしえ)の公都、その郊外の丘に再び風が吹き始め、道端に降り積もる赤や橙、黄色の木の葉が一斉に舞い上がった――。
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