[明日の絵]
私の家には、何枚かの絵が飾ってある。
今日はそれをご紹介しよう。
東向きの壁に掛かる一枚の絵は、深い森にたたずむ湖だ。
風に乗ってうっすらと白い霧が漂い、麗しい深緑と交錯する。
鏡と見まがうばかりの澄んだ湖には、淡い霧と、まだ完全には明けきっていない青空の雲が映っている。時は清らに――。
背中に羽の生えた妖精たちが、水面の上の雫となって。
まだ誰もが最後の眠りに沈む間に、明け方のワルツを踊る。
南向きの壁の絵は、島の斜面に広がるなだらかな野原だ。
日はまぶしく降り注ぎ、せせらぎに小魚の銀の鱗が光る。
あらゆる色の蝶が舞い、背の低い木々の枝先で鳥が唱う。
微かに潮の香を帯びた風を受けて、黄色の花は波になる。
その強い匂いが、絵の範疇を越え、私の元に届けられる。
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