[逃げ出す前に、逃げ出したもの(1)]
「うーん……」
難しい顔して、机に向かって考えてる。後回しにした宿題は、想像以上に難しい。電気スタンドが慌しくチカチカ光っている。
私は腕組みし、首をかしげ、眉を寄せて考えた。
「む〜むむむ」
文章を読み返す。無意味にシャーペンの芯を出し、引っ込める。その間も、外ではフクロウが、苦労もせずに鳴いている。
「あ〜あ、逃げ出したいなぁ」
頬杖をつき、眉間に皺を寄せ、もっと眉をひそめた。
その時、何の前触れもなく、突如。
机の上に、黒くて細長いものが二つ落ちて来た。
(え、何、どっから来たの?)
それを見つめて、頭をぐるぐる巡らせる。
何、これ――腕に鳥肌が立つ。
次の瞬間、その二つの黒い物体がわさわさと動いた。
あたしは叫んだ!
「ムカデ!」
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